Eternal Friends
□07)一大事
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* * *(シリウス視点)
外は雨が降っている。
世界の全てを隠すように。
秘密のすべてを隠すように。
そんなとき、リーマスは至極ホッとした表情を浮かべる。
それをみて、俺たちも少しだけ気持ちが明るくなる。
「諸君、一大事だ」
部屋に入ってくるなりのジェームズの一言に、全員が一時は目を向けたものの、すぐにそれぞれの作業に戻った。
というか、明日の朝一番にある薬草学の提出課題をやっているだけともいう。
ピーターが苦手なのはいつものこととしても、こと薬関係にだけはリーマスも弱いときてる。
仕方ないので、俺が使った資料を貸してるってわけだ。
当然ながら、ジェームズは終っている。
同じだけ過ごしてて、こいつが課題をやってる姿なんてそうそう見ないが、いったいいつやってるんだ。
ぼーっと考えこんでいる俺の耳に、生暖かい気配が吹きつけてるのを感じる。
「一大事なんだってば」
「うわあ!!!ジェームズ、おまっ!!耳はヤメロ耳は!!」
「一大事なんだ」
「わかった、聞く!聞くから!!」
椅子を立ち、ジェームズから離れたものの、とりあえず一定の距離を保っておくにこしたことはない。
どうして普通に話し掛けないんだ。
「わかってくれればいいんだよ。
リーマスとピーターもちょっと休憩してお茶にしないかい?
リリーからクッキーを貰ってきたんだ」
ニッコリと笑って、すぐにリーマスが立って紅茶をいれにいく。
その間にピーターは羊皮紙やなんかを片付けて、テーブルの上には甘い匂いの御菓子が置かれる。
そして、全員が椅子についてから、ジェームズがおもむろに話し出した。
「さっき談話室で偶然会ったときにね、リリーが僕たちにって」
「偶然じゃないだろ、絶対」
「そんときにさ、ミオが手紙を書いてたんだ」
無視かよ。
「手紙なら誰でも書くでしょ?」
「そうなんだけどね、ピーター。
でもそれだけじゃないから一大事なんだ」
俺たち全員の顔を見まわしてから、ジェームズは続けた。
「見たんだ」
簡潔すぎだ。
「ミオのところに来る手紙、知ってるだろう?
ミオが同じことをやってみせてくれた」
「なんだって!?」
叫んだのは俺だけで、リーマスは落ちついてジェームズを見ている。
ピーターは言葉も出ない様子だけど、ワクワクしているのは同じだろう。
いつもくるミオの手紙は梟便でなく、真っ白い鷹で、すでにホグワーツの名物となりつつある。
どんな魔法を使ったら、キスしたとたんに手紙に変わるのか、ジェームズが興味津々でいるのは知っている。
「封筒に変なインクで変な模様を書いてキスをする。
そしたら、窓から小さな梟になって飛んでったんだ。
あれはすごいよ。
君たちも一度見せてもらうといい。
ホグワーツの魔法とは異なる魔法みたいだ」
小さな、というところで両手で大きさを示してくれたけど、その大きさは小さいというかすでに普通の梟のサイズですらないんじゃないかというくらい小さい。
ところで、この話のどのへんが一大事なのかさっぱりわからない。
一体何をいいたいんだ。
「一大事ってそれだけなの、ジェームズ?」
おっとりとした口調でリーマスが尋ねる。
砂糖が足りなかったのかまた一つ二つと足しているが、それで十個は確実に超えてる気がするのは俺の気のせいだろうか。
「それだけでも充分一大事だと思わないかい?」
「明日提出の薬草学の課題より?」
笑顔に怯んだのはジェームズの方だった。
いや、まだ終っていないのかといいたいのだろうが、この場にリーマスに向かってそんなことを言える人物はいない。
「ま、前置きはこのくらいにして本題に入ろうか」
さっさとそうしなよというリーマスは、言外にまってましたといってる。
俺もまさかそれだけだとは思わなかったけど。
ね。
いや、ホントだって。
「俺たち以外に秘密の通路をつかってる人物がいる」
神妙にいわれたあと、とりあえず頭の中で考えてみる。
秘密の通路。
ホグワーツで普通に生活していれば必要としないであろう、魔法の掛かった通路だ。
どうも出来た当初からあるような気がするその通路を、知っているのも利用しているのも俺たち4人以外にはいないだろう。
普通なら、たぶん見つからない。
見つけられないはずだ。