Information is Money
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私は知らなかった。
本気になった悪戯仕掛人がどれほどのことをするかということに。
私は知らなかった。
あの地図がホグワーツの中だったら全部見渡せてしまうものだということに。
私は知らなかった。
シリウスとリーマスの標的が私だということに(違)
青い空も荘厳なホグワーツ城を眺める余裕もなく、透明マントをかぶって箒に乗ったまま、私はリリーのいるはずの教室を覗きこんでいた。
本当なら、私もそこで授業を受けているはずだったのに!
リリーとノートにメモ書いたやり取りしながら、情報を集めている最中だったのに!!
こうなったのは、全部ジェームズのせいだ!
教室に目当ての赤い煌きを見つけられずに私は裏庭に、到底箒でなければ来られそうにない裏庭に降り立ち、透明マントを脱ぎ捨てた。
その辺に放って、箒を置いて芝生に座る。
膝を抱えて、いつもの羊皮紙を取り出す。
混乱した時は書いてしまう方がすっきりと何もかもわかる。
シリウスは私を好きらしい。
リリー以上に?
たしか私は昨夜、彼にこう言った。
「愛しい人が恋敵と一緒にいるから苛ついている」のだと。
リリーが好きだから、ジェームズといていらついていると思ったから。
でも、このリリーだと思った部分を置き換えると。
あの時私の隣にいたのはリーマスで、恋敵ということは。
「うそだー!!」
「レン発見」
どこからか現れた嬉そうなリーマスに驚きつつ、箒を手に取る。
「ぎゃぁ!私はリリーです!レンじゃありません!」
「何言ってんだ、リリーはそんな叫び方しねぇよ」
逃げようとした反対側からシリウスも出てきた。
絶体絶命というのはこういうことをいうのだろうか?
透明マントはたぶんその辺。
だけど、はっきりととれる自信はない。
適当に投げるんじゃなかったといまさら後悔しても遅い。
箒はここにある。
けど。
「俺から逃げられると思ってんの?」
にやりと人の悪い笑みを浮かべ、シリウスは後ろでの箒を向けてくる。
彼はクィディッチの選手だ。
私が敵うはずがない。
その上、やつのお頭はトップクラス。
対して中の下クラスの私とは開きが有りすぎる。
そんな相手と一般生徒の私とは実力がかけ離れすぎている。
「逃げられないと思ってるんだ?」
わざと不敵に笑ってみせるのは、こういう場合、取乱した方が負けだと思うから。
勝てるとは思ってないけど、逃げれるとは思っちゃいかんですか。
「レンこそ、逃げれると思ってるんだ?」
そういったのはリーマスで。
声は、すぐ近くで聞こえた。
かすかに薫る、甘いお菓子の匂いでわかる。
彼独特、というよりもおそらく非常用で持ち歩いているチョコレートだと思うが。
関係ないが、私の調査によると彼は甘いものがなくなると禁断症状がでるらしい。
どんなのか聞いたことないけど。
「わるいっ?」
そのリーマスの隣をすり抜けようとして、つかまれたローブをあっさりと脱ぎ捨てる。
あっけにとられる二人を振り返らずに、一番近い隠れ穴へと飛び込んだ。
逃げるぞとか何とか聞こえたけど、ええ、逃げさせていただきます。
捕まったが最後、どんな顔をしていいやらわからないのです。
好きは好きだけど、私のはその他一般の好きであって、しかも誰かひとりだけを特別に好きになる人の気持ちなんてさっぱりわからない。
こんなときはどうしたらいいんでしょう?
* * *