Information is Money

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 イキモノにはまず狩る側と狩られる側があって、私はどちらかというと前者だと思っていた。
 それが多大な自惚れと誤解だと気がつかされたのは、彼らのせいだ。

「ジェームズ。これは、私に対する挑戦ととってもいいのかしらね?」

 すべてを聞いてから意識して出す声は、やはり私のモノではない。
 どこまで聞いても可愛らしく、耳に心地好いのはリリーのモノ。

 ちなみに、リリー本人は私の隣で険しい顔をして腕を組んでいる。

「挑戦じゃない」

 対して、ジェームズは机の端に座って柔らかい瞳で私達を見つめている。

 ここまでやっていて、挑戦じゃないというか。
 こいつは。

 殴りかかりそうになる気持ちを抑えて、拳を強く握り締める。
 切り残した爪が深く食いこむけど、刺さっているわけじゃないから痛くはない。

「レンに聞きたいことがあるだけだよ」

 やんわりとした言葉に私が返す前に、二人の男が色めきたつ。

「だったら、普通に聞けよ!
 わざわざこんなことしなくたっていいだろ?」
「変身薬のこととはまったく関係ないように思うんだけど?」

 まるで番犬……いや、違うか。

「私の姿で気分は悪くないの、レン?」
「それは大丈夫よ。
 リリーこそ大丈夫なの?」
「ああもう、自分が目の前にいるなんて、妙な感じよ」
「じゃなくて、授業」
「ここを放り出していけるほど、薄情な関係だと思ってるの?
 ひどいわ、レン。
 私は一番の親友だと思ってたのに……!」

 行き過ぎだよ、リリー……。

「それで答えたら、すぐに元に戻せるの?」
「解答如何によるかもね」
「別に放課後になれば、セブルス脅してでも元に戻す薬を作らせるんだけどね」

 たった今思い当たったことを言ってみると、ジェームズの顔が急に険しくなる。

「別にすぐスリザリンに潜入しても良かったんだけど、リリーの姿で見つかったら厄介だからさー」

 減点されるのがグリフィンドールと言う事に変わりはないけど、私が捕まるのとリリーが捕まるのとじゃ全然状況が違う。

 そういうときにこそ、私の情報は役に立つ。

「そんなこと別にしなくても、ここにあるし。
 僕は君の情報源が知りたいだけだよ」

 苦笑しながら、なんてことを言い出すんだ!

「レンは常々言っているよね。
 情報は命で、情報は金だって」
「ええ、そうよ」

 情報は私を助けてくれる。
 いつだって、誰よりも確かに。

「その情報を君はどうやって集めてるんだい?」

 そして、情報以外の武器は持っていない。
 いつだって、それだけを武器にしてきたのだ。
 これからもそれは変わることのない法則。

「ジェームズ、そんなことの為に?」

 三人が驚く中、私は心の中でため息をついた。

 そんなことで教えるほどのものじゃない。
 でもジェームズなら、私の大切な武器を易々と教えることなどないとわかっていると思っていたのは、私の思い違いだったのだろうか。

 いままでもこんなことがなかったわけじゃない。
 私の情報源を知りたがるモノは多い。
 どんな手段を使っても、つきとめられないと嘆くモノも多々ある。
 でも、ジェームズだけはそんなことがないと思っていたのに。

「知って、どうする気?」
「知りたいだけだよ」

 好奇心だと、それだけだと。
 言い切ってもここまでやる理由がわからない。

「情報屋としての私に言ってるなら、答えるわけにはいかないわ。
 あんたのいう通り、情報は私の命。
 それを易々と教えると思ってるの?」
「思ってないから、こんな手段に出たんだよ」

 至極もっともである。
 でも、納得するわけにはいかない。

「だったら、まずこの姿を元に戻してくれなきゃ話にならないわね」

 リリーは確かに可愛いけれど、この姿でいることの不便は多い。
 ジェームズの知りたがっているソースも然り。

「そっちが先だよ」

 リリーに手を差し出すと、何も言わずに私の杖を渡してくれる。
 以心伝心、意志疎通は問題ない。
 持った杖をまっすぐにジェームズに向ける。

「無理やり、聞き出すことも出来るわ。
 どっちがいい?」
「何を、する気なのかな?」
「同じ目に合わせてあげるだけよ、リーマス?
 犬とか好きかしら?」
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