Teach the Truth
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間に合うか間に合わないかは行ってみなければわからない。
私は全部この目で見たことしか信じないことにしている。
「私に、追わせてください」
ハロウィーン後の事件で皆が浮れている中、私は初めて上司に立てついた。
それまでは従順に従がってきた大人しい部下だったミオ・##NAME2##が、誰にも口を挟ませることなく言い切ったので、あたりは一時騒然となった。
「なにも“名前を言ってはいけないあの人”が死んだ日に、仕事をしなくても」
すこしだけ親しくなっていた友人たちに目もくれず、仕事をもぎ取った。
別に他にやりたい人がいなかったから、止めもされなかったが。
木立から吹き付けてくる風が腰に届きかける黒髪を揺らす。
もともと非魔法族(マグル)出身のミオはローブを嫌って、いつも軽装だ。
ジーンズにクルーネックのシャツに薄手のジャンパー。
もっているのはサブバッグ一つで、中身は魔法治療薬ばかり。
助けるための薬しか持ち歩かないことにしている。
一応、金銭は一番外側のポケットにいれている。
グリンゴッツ銀行の鍵は薬と一緒に埋まってる。
「無茶をするね。相変らず」
「それほどでもないわ」
日課となりつつある親友二人の墓の前で報告をしていると、必ずリーマスが現われる。
約束したワケではないけど、二人とも同じ時間に会って、少しだけ話をする。
「シリウスは、裏切ってなんかいないよね」
「こんなときにピーターはどこにいるのかね」
姿を消した二人の友人たち。
秘密の守人はシリウスだったけど、少しだけ、私もリーマスも気になっている。
シリウスがジェームズを裏切るなんて、ありえない。
「今日はお茶してる時間もなさそうだね」
「うん。ごめん」
誰よりも早く、シリウスを捕まえて。
この目にこの耳に真実を教えて。
「なにかわかったら」
「梟を」
おろしていた長く真っ直ぐな髪を白い紐で一本に括り、リーマスに背を向けて歩き去る。
一度も振り返らずに。
そうすると、とても男前度が上がると、生前リリーに言われたのを思い出す。
それを聞いたジェームズが私に嫉妬したのも覚えてる。
シリウスは対抗してローブを翻したら、椅子に引っかかって失敗して。
ピーターは羨ましいと言っていた。
リーマスは、ただ、笑って、いた。
信じたくないのは私たちだけではないと信じたい。
学生時代、私は皆が好きだった。
卒業したくなくなるほどに、大好きだった。
一番好きだった人には何も伝えられなかったけど、ずっと私たちは変わらないと思っていた。
ハロウィーンのあの日までは。
リーマス、どうしてだろうね。
二人だけに、なっちゃったよ。
裏切られてもいい。
これ以上、誰もいなくならないで。
「ミオ」
強く呼ばれて、私はふりかえる。
「気をつけて」
リーマスは泣きそうな、困ったような顔をしていた。
「リーマスもね」
彼のローブは少し破れ掛けていた。
こんな時じゃなければ、繕ってあげるんだけど。
「帰ったら、そのローブ直してあげる」
きっと私も泣きそうな困ったような顔をしていたかもしれない。
「約束?」
「約束」
裏切られてもいい。
リリーとジェームズがいないなんて、誰か嘘だと言って。
再会の約束は、きっと願い。
これ以上誰もいなくならないで。
私を置いていかないで。
* * *