Teach the Truth

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ドリーム設定





 夢と現実というのは、残酷なぐらい似ていることがある。
 でも、たまに夢を夢と認識出来てしまう時がある。
 だからこれが夢だとわかった。

「ミオ、聞いてよ!!
 ジェームズったらっ」

 怒りを多量に含ませた声で、談話室で宿題をしていた私にリリーは近づいてくる。
 私はまたか、と苦笑しながら振りかえる。

「はいはい。今度は何?」

 羽ペンを置いて近づいて来たリリーと向きあう。

「ジェームズがね、私のこと……って」
「え、きこえないよ」
「だーかーらー!!
 あーもう!あんな人知らないっ」

 いいながら抱きついてくる親友を宥めながら、私は疑問符をそこら中に浮かべる。

「そーゆーこと言わないの」
「いいもん、私にはミオがいるからっ」
「もうリリーってば、何があったのよ?」

 視界にジェームズが苦笑しながら入ってくるのが見えて、視線を合わせてお互いにかすかに笑う。
 その振動で気がついたリリーは、ジェームズの元に詰めよって、泣きそうな声で怒る。

「今回ばかりは譲らないわよ!」
「リリー落ちついて」
「皆が幸せにならなきゃいけないのっ」
「そんなのあたりまえだよ」
「じゃあどうしてっ!」

 微笑ましい(?)口論を眺めていると、テーブルを指で叩く音で呼ばれる。
 振りかえるとリーマスがいつもの笑顔で私を待ってる。

「いつものことだし、続きやろう?」
「ああ、うん」

 私はリーマスと闇の魔術に関する防衛術で出されたレポートをやっているところ。

「だから、ここはこれだっていってるだろ!?」
「え、え、でも、授業中にやったら、緑色になったよ?」
「そんときは先に間違えて、ピンポン大豆落してたろ」
「う、え、あ、そうだっけ?」

 となりのテーブルではシリウスがピーターの魔法薬学レポートを手伝っている。
 怒鳴りながら教えてるけど、あれで面倒見はいいし、成績もいい。

「ミオ、シリウスに見とれてないで宿題」

 不機嫌そうな声にふりかえると、顔だけは笑顔で怒っている。
 リーマスは空気で表情がわかる。

「ご、ごめん」

 教科書を差すリーマスの指は白くて細い。
 とても、綺麗な手だ。
 本人は汚れてるというけど、私にはとても優しい手。

「聞いてる?」
「ああごめんなさいっ」

 深いため息に苦笑する。
 笑顔がかすかに崩れるその瞬間も好き。

「休憩する?」
「え、でも……」
「誰かさんが気になって、勉強が手につかないようだしね」

 紅茶を入れてくるといって、リーマスが立って給湯室へ消える姿をそっと目で追う。

「あ、ミオ。俺もコーヒー」
「僕も……」
「ミオ、リリーと僕に紅茶を頼めるかい?」
「ちょっと、ジェームズ。
 勝手にそんなっ……ジェームズには甘いホットミルクをお願いね。ミオ」
「そんな〜リリーぃ」

 どうして私にいうかな。

「だって、リーマスにまかせたら」

――砂糖味になる。

「……了解」

 どうせならその方がいいかもね。

 ずっと続くと思っていた。
 この変わらない日々。
 なつかしい、本当に思い出の中でしか会えなくなってしまった人たち。

「リーマス、手伝う〜……て、もう作っちゃったの?」
「うん」

 ニコニコしているリーマスがトレイに乗せているのは、紅茶三つにコーヒー二つ、湯気の立つミルク一つ。

「砂糖は……?」
「あ、入れ忘れてた」
「わああ!入れなくていい入れなくていい。
 砂糖壺ごともってこう!」

 間一髪。
 砂糖壺を抱える。

「そんな慌てなくても、僕とミオは困らないよ?」
「他も困らせなくていいのっ」

 クスクス笑いに押されて談話室に戻る。
 まだリリーとジェームズの口論は続いてるようで、シリウスはつかれたように椅子の背もたれに寄りかかり、ピーターはまだ必死で教科書を睨んでる。

「リリー、ジェームズ」
「もう出来たの?」

 二人の前に紅茶とミルクを置くと、二人の視線が少しだけ柔らかくなる。
 でも、ジェームズは笑顔のまま固まっている。

「リーマスが」

 四人全員が目に見えて固まる。

「大丈夫、砂糖はまだだって」

 同時に吐き出される安堵のため息の後で、リーマスが口を開く。

「そうそう。
 コーヒーはどっちかもう砂糖入れちゃったから」

 もうすっごい可愛らしい声と仕草で。

「どっちかってどっち!!?
 いくつ入れたんだ!」
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