Teach the Truth
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* * *(リーマス視点)
真実とは、どこまで残酷なんだろう。
甘い痛みを僕に与えるんだろう。
「ま、さか。そんな……?」
羊皮紙の切れ端にうつる点に幾度、目を凝らしてもそれはあった。
間違いなく、そこに。
「生きているのか、ピーターが」
堪えきれず、杖だけを手に駆け出す。
これがミオの見た真実だろうか。
裏切ったのは、誰だ。
『シリウスは、裏切ってなんかいないよね』
『こんなときにピーターはどこにいるのかね』
最期に墓前で会った時に交わした台詞が、頭の中をぐるぐる回る。
学生時代、皆で幾度も駆けた秘密の通路を通り、叫びの館に入る。
真実はなんだ。
ミオが捉えた真実はこれなのか。
シリウスはやせ細り、学生時代の色男も形無しなぐらいひどい有様だったけど、その瞳の輝きだけは変わっていない。
ギラギラ痛いくらいに輝くシリウス。
あの頃のままだよ、シリウスは。
やっぱり裏切ってなんかいないよ。
ミオの言った通りだったね。
「やあ、ピーター。しばらくだったね」
すべてを知るともう、僕の心は穏やかだった。
僕の目の前のピーターはひどく怯えていた。
ミオの見つけた真実はこれか。
シリウスがピーターに向かって魔法を放とうとし、ピーターがシリウスにむかって魔法を放とうとしたときにあったというもう一つの魔法は君だろう。
魔法族もマグルも関係なく、闇の魔術に抗いながら放った最後の優しい魔法。
被害を最小限に食い止めるための、抑制魔法。
とても、ミオらしいね。
「一緒にこいつを殺るか?」
シリウスの申し出は是が非でもない。
ミオにかけられた闇の魔法。
彼女にそんなことができるのは、油断させることの出来るピーターだけだ。
ミオの、仇だ。
「ああ、そうしよう」
ジェームズとリリーを裏切り、シリウスを罠にかけ、ミオを……人形へと変えてしまった。
怒りで身体の中の人狼の血が求めるものに、僕は抗う気もない。
「ピーター、さらばだ」
掠めるのはミオの明るい笑顔の面影。
すべてを奪ってしまったピーターが憎くてたまらない。
封じこめてきた憎しみが溢れ返って、本物の狼にでもなりそうだ。
人間なんて、そういうものなのか。
あの頃、あれだけ信頼を固めてきた仲間さえ裏切れるのか。
今の僕が人狼に変身してしまったとしても、きっとこいつを切り裂くのに躊躇しない。
いっそ何も考えずにそうなってしまうほうがいいかもしれない。
『ヤメテ』
ふと聞こえる声に耳を澄ませる。
ひとりじゃない。
ジェームズ、リリー、ミオ……。
怒りを治める声たち。
優しかった、彼ら。
沸騰寸前の脳が一気に醒めてゆく。
見失わないで。と。
声、が、聞こえる。
「殺してはだめだ。
殺しちゃいけない」
僕たちの前に立ちはだかるハリーを一瞬、ジェームズと見間違えただけだろうか。
「僕の父さんは、親友がこんなもののために殺人者になるのを望まない」
望まなくても、僕はピーターを許すわけにはいかないんだ。
守れなかったことを、まだ悔やみ続けているんだ。
あの時、一緒に行っていればミオをひとりで行かせなければ。
いや、闇払いになると言った時に止めていれば。
後悔は後からいくつだって出てくる。
ミオに想いを伝えていれば、今頃もっと違っていたかもしれないのにと。
* * *