Teach the Truth

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* * *(リーマス視点)
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 バサバサと梟が僕たちを追い越して行く。
 空は灰色に曇っていて、今にも雨が降り出しそうだった。

「大丈夫なのか、1人にしておいても」
「こんな山奥にそうそう人は来ないし、ちゃんと罠もしかけてあるから」

 だったら大丈夫だなと、シリウスも小さく笑った。

 暖炉はネットワークに繋げていない。
 万が一、そこから侵入者があっても困るから。
 だから、僕たちは道無き道を進んでいる。

「まだ回復はしていないんだろう?」
「うん、でもとりあえず自分で動くぐらいはできるし」

 シリウスとホグワーツで再会して、あれから一年。
 僕はミオを引き取って、山奥に身を隠して暮らしている。
 山は身を隠し易い。
 この辺には狼も多いし、万が一ということはあっても、彼等は僕に危害を加えないだろう。
 迎え入れてもくれないが。

「それはどういうことだ?」
「動かない人形が、操り人形になってるだけさ」

 ミオは意識を回復してはいないけど、とりあえず、生きる為の最小限の行動はしてくれている。
 だからこそ、僕も引き取ることができたのだけど。

 木が徐々に開けてくる。
 もうすぐだ。

「それでお前は良いのか?」

 言いか悪いかと言われれば、よくないと答えるしかない。
 でも、まったく動かないあの12年に比べれば、離れていた12年に比べれば近くで見ていてやることの出来る今はまだマシだと思う。

「着いたよ」

 もう月がイイ高さになっているというのに、家には明りが付いていなかった。

 いぶかしむ友人に笑い、先に立ってドアを開ける。

「ミオ、ただいま」

 光を杖の先に灯す、その先に奥から女性が出てくる。
 男物のシャツとズボン、長い髪を白い布で適当に1本に結わえている。
 髪は闇の色そのもので、肌の白さが、少し異様だ。

「……ミオ」

 親友が驚愕のままに近寄り、抱きしめるのを僕は黙って見守る。
 泣いているのだろう、肩が震えている。
 ミオはなんの表情もしていない。

「何も、なかったようだね」

 その脇を通りぬけて、先に立って歩き、暖炉に火を灯す。
 部屋の中はまだ寒い。

「シリウス、大した物はないけど、夕飯食べるかい?」
「あ、あぁ」

 戸惑う声でミオを離すと、彼女は部屋の中へ歩いてきて、奥の部屋へ行った。

「ドアを閉めてくれ。シリウス」

 呆然としている彼の肩に向かう。

「シリウス?」
「……よかった」

 安堵の声が、聞こえた。

 今のは僕と同じ。
 生きていてくれてよかった、の、良かった、だ。
 状況は決して良い物ではないけど、生きていてくれるだけで、それだけでいいんだ。
 今はそうでも未来はまだあきらめていないから。

「あぁ、そうだね」

 彼の細い背を押して、ソファーに座らせる。
 棚からタオルを取ろうとして、ふと、梟のことを思い出した。

「ほら」

 タオルを投げて、自分は彼女のいる寝室へ向かう。
 ベッドにいつも通りに彼女は横たわっている。
 その窓に梟が一羽、目を光らせて止まっていた。
 セブルスの梟だ。
 括りつけてある袋の紐を取って、彼を撫でる。
 袋の中身はいつもの薬だ。
 ミオと、僕の薬。

「君のご主人にありがとうと伝えて置いてくれるかい?」

 バサバサと飛び立つ姿を見送って、窓を閉め、ミオに軽くキスを落して部屋を出た。

 部屋から出ると、シリウスはぼーっと暖炉の火を見つめていた。
 赤い炎の中に、何を見つけるつもりなのか。
 そうしていると、まるでミオを見ているようでイヤだ。
 これ以上、誰かが、いなくなってしまうのも壊れてしまうのも。

「シリウス」
「あ、あぁ。なんだ?」

 反応が返ってくることに、心底安堵する。

「驚いたかい?」

 予告はしてあっても、驚かないはずはない。
 僕だって、今だにミオが普通の反応をしてくれると期待してしまう。

「本当に、ミオなのか?」
「……僕だって、嘘だと思いたいよ」

 でも、本物だと知っているんだ。
 僕もシリウスも。

「セブルスの薬でも、まだ開発中のものばかりだ。
 せめて、どんな魔法がかかったのかわかれば対処のしようもあると」
「……っち、使えねぇな」

 舌打ちするのに笑った。
 でも、あの頃磔の魔法にかけられて、まだ回復していない魔法使いもいるから、当然だと思う。
 セブルスは医者では無いし、それでもここまでは回復してくれた。
 感謝もしている。

「先に夕食にしよう」

 ダンブルドアから手紙も来ているけど、話はその後だ。



* * *
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