Tea Party

□Give & Take
1ページ/2ページ

ドリーム設定





 彼女は大の紅茶好きでした。
 美味しい紅茶を飲むためならば、どこへでも行きます。
 美味しい紅茶を飲むためならば、何でもします。

 彼女の特技はケーキ作りでした。

「ええと……ダメですか」

 目の前の彼女の困った微笑を前に、セブルスは大きく息をつく。

「どこで聞いてきたか知らんが、我が輩は紅茶を人に淹れたことなどない」

 よって、彼女が自分の前に現れる理由がわからない。
 と。

「えー」

 そんなに不満そうに叫ばれても。

「せっかく貴方の好きだっていうケーキ焼いて来たのにー」

 別にケーキは好きではないし、残念でもない。
 だが、何故彼女のこの顔に気持ちが焦るのか。

「……いったい誰に何を聞いた」
「それは」

 それは?と目で問い返すと、にっこりと微笑む。

「企業秘密」
「……では、ダメだ」
「教えたら淹れてくれるんですか?」
「……そうは言って」
「あ、じゃあ淹れてくれたら教えます」

 いかがですか?と。

 どこかの誰かを彷彿とさせる飄々とした風貌だが、憎めない。

「あっ、ちょっとっ!」
「ついてこい」

 たまには、良かろう。

「あ、いいの?」

 後ろからついてくる足音に久方の心楽しさを感じながら、道を歩いた。

 何故、彼女がこちらにいるのか。
 疑問に思わないことを、疑問と思いながら。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ