one‐shot

□Chocolate
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 これはれきっとした報復。
 当然の報い。
 ねぇ、私はチョコレートより下なわけ?

 リーマスはいつもチョコレートを持っている。
 本人からはっきりと聞いた事はないけど、なにかってーとチョコチョコチョコ……。

「元気ないよ、どうしたの?」といいながら差し出したり、
「疲れている時は甘いものがいいんだよ、リサ。
 はい、チョコ食べる?」とこじつけて見たり、
「おなかすいたね。
 おやつにしようか?」とポケットから板チョコ出したり。
 なんでいつも持ってるの?

「リーマス、今日もチョコ持ってるの?」
「うん、持ってるよ」

 あっさり返ってくる返答に、心の中で毒づく。
 だって、彼女の私よりもずっと一緒にいるんだもの(そりゃ、四六時中私が一緒にいたら、大問題だろうけどさ!)。

「食べるの?」

 差し出された剥き出しのチョコにそのまま齧り付く。

 あむあむあむ。

「リサ……自分で持ちなよ」
「やだ」

 リーマスが引こうとする腕をひっつかんで、固定する。

 あむあむあむ。

「なんか、これ可笑しいって」

 クスクス笑っているのを聞きながら、つられる笑いを堪えてチョコレートを全部食べた。

「餌付けしてるみたいだよ」
「誰が?」
「僕が」
「誰を?」
「リサを」

 パっと浮かんだ妄想に自分で赤面して、顔を反らせる。

「餌付けされてあげてるの!」

 小さな笑い声が聞こえてくる。
 でも、全然耳障りじゃないあたり、私はそんな彼をも好きなのだろう。

「それはどうも」

 くっそー負けてる気がする。

「まだ持ってるでしょ、チョコ?」
「まだ食べるの?」

 手を差し出すと、ほらやっぱりまだ出て来る。
 受け取ったそれをリーマスから届かない位置に置いて、また手を出す。
 不思議そうに笑いながらもまた出てくる。
 私はそれを置いて、また手を差し出す。
 不思議そうにしながらも、やっぱりまだ持ってる。

 そんなことを繰り返して、私の隣にはチョコレートの山が積み上がる。
 一体どれだけ持ってるんだろうと思って手を出すと、やっぱりまだ出て来るし。
 ローブの中にどうやったら、これだけ隠して置けるのか。

「まだ出すの、リサ?」
「まだもってるのよね、リーマス」

 お互いに笑顔で続けると、なんのことはないとまだ出て来る。

「全部出させる気なの、ここで?」
「そうね。
 できれば全部」

 笑顔でいってあげると、不可侵の微笑が返ってきた。
 実はこういう表情の時、彼は非常に困っていると決まっている。

「てか、これだけ出してもまだあるってどういうことよ。
 一体幾つ持ち歩いてるの?」

 彼は少し考えこんで、こういった。
 「数えたことないから」と。

 そういうのもどうかと思う。
 いくらチョコが好きったって限度ってもんがあるでしょう。
 大体、どうしてこんだけチョコレート食べて、全然ニキビとか出ないの?こんな白いスベスベのお肌しちゃって、愛しさ余って……てやつになるじゃない。

「いいかげん止めた方が良いよ。
 戻すの大変だから」
「戻さないで、ここでお茶すれば良いのよ。
 皆も呼んでさ」

 チョコレートパーティーなんて、ごく一部以外は喜んでくるしね。

「シリウスには酷だろうね……」

 酷だと良いながらも、リーマスはいたって愉しげである。
 おそらく大の甘い物嫌いのシリウスをどうやって誘うか考えたのだろう。
 とても楽しそうだし、後で教えてもらおう。
 うん。

「でも、僕がただでチョコあげる訳ないでしょ」
「ケチじゃないでしょ、リーマスは」
「TPOによるね」

 それまで差し出していた手にチョコレートを重ねることなく、腕を引いて、自分の胸に私を抱き寄せる。
 まだ、彼からはチョコレートの甘い香りがしている。

「リサ、さっきから気になってることがあるんだ」
「何を」
「僕ね、チョコが好きなんだよね」
「知ってるよ」

 そら、嫌になるくらいのこの甘い匂いをかげば。

「でさ、同じくらい好きなものとチョコが一緒にある場合、どうすれば良いと思う?」

 一緒にって。

「……浮気モノ……っ」
「いてててて」
「私以上に好きなチョコと同列なのって何よ!」
「いたいよ、リサ」

 片方の頬をつまんで思いっきりひっぱっているのに、まだ笑っているし。
 チョコが好きなのは知ってるけど、私は3番目なの!?
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