one‐shot
□Think only me.
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* * *(シリウス視点)
いつも強気で、それでいてか弱いなんて言葉なんて全然似合わない。
そんな女だった。
「リリー!リリーいる!?」
談話室に駆けこんできた少女をリーマスとピーターが驚く瞳で受けとめる。
「リリーなら、ジェームズのところだよ?」
「じゃ、ジェームズは?」
「リリーのところ……」
「それは聞いた!」
俺は寝転がったソファーから顔もあげずに声をかける。
「リリーに急用か?」
少しの含み笑いを加えて、のっそりと起きあがる。
目を向けると彼女は固まったまま俺を凝視しているし、親友二人は不思議そうに俺たちを交互に見ている。
「馬鹿には聞いてないっ」
真っ赤な顔で叫んで、彼女はグリフィンドール搭から姿を消した。
ドアに挟まりかけると思った髪は、するりと抜ける。
白い顔を紅に染めて、流れる黒髪がサラリと揺れていても、細い腕がしっかりと握りこぶしを作って仁王立ちしていたとしても。
その姿はまこと可愛らしくて、脳裏にまたひとつ焼き付けられる。
「か〜わい〜ぃ」
今頃リサの頭の中は俺のことでいっぱいだろう。
ざまあみろ。
優越感に浸る俺の目の前に、リーマスが立ちはだかる。
「シリウス」
「なんだ?」
「リサに何をしたの?」
おい、親友よ。
ピーターがなんだか怯えているぞ。
「いんだよ」
「なにが」
「すこしくらい俺だけのことを考えやがれってね」
背を向けて、リーマスを見ないようにした。
俺の親友は温厚そうに見えて、実は誰よりも短気で怖い。
ありきたりで悪い。
でも、本気でお前を愛しくなったんだ。
誰にも渡せないと、思ったんだ。
だから、少しの間だけ、俺のことだけ考えて。
* * *