Teach the Truth
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* * *(ミオの夢)
リーマスとシリウスに鋏まれて、中庭の木陰でのんびりとひなたぼっこ。
うつらうつらと日差しと温かさが眠気を誘う。
「もうすぐ卒業かー」
「そうだねー」
二人の声が近いけど遠く聞こえる。
風は少し冷たいけど、穏やかで信じられないくらいあたたかい。
「実感わかねーな……」
「最後まで課題は残ってるしね」
「何も最後の最後まで出さなくてもいいじゃねーか。なぁ?」
「んー」
返事ははっきりと言葉にならなかった。
なんて、言おうとしたんだったかな。
「うわ、こいつ寝てるよ」
「ひざし、あったかいからねー」
「そんなんいったって、まだ風冷たいしよ。
風邪引く……」
「っ!」
小さな、らしくない可愛らしいくしゃみ。
こんなの私じゃない。
「ほらー」
「ほらじゃねえって。
リーマス、お前のも貸せ」
「はいはい」
ふわりと温かさと重り。
二人がローブをかけてくれたのだと思う。
そうか、このあたたかさは二人の優しさだ。
「なぁ卒業したら、どうする」
「どうだろうねー」
「俺、ミオといたいな」
「僕もみんなといたいよ」
「俺はミオの話してんだよ!」
「し!起きちゃうよ」
聞こえないフリ、聞こえないフリ。
男の子同士の会話って、聞いてるだけでもけっこう楽しい。
「起きねーぞ」
「セーフ……」
「リーマスはミオといたくねーの?」
「だから、僕はみんなと今の関係でいられればいいよ」
ツクンと柔らかい芝が突き刺さる。
「今のまんまでいいのか?」
「うん」
「ミオとも?」
「……うん」
「今の間は?」
今の間は、私と今のままの関係で居続けることに対する不満か、不安か。
「そんなとこ、気にしないでよ」
笑うリーマスの声は風に寂しさを乗せる。
気にするよ。
気になるに決まってる。
だって、私、リーマスが好きなんだから。
「悩んでるのは、体質、か」
ふと呟くシリウスの言葉に、リーマスが空気を強張らせる。
どうしてわかるって、リーマスのことだもの。
「人狼の血は、血を介して移るんだ。
ミオを危険にあわせたくない」
それは余計なお世話だよ。リーマス。
「そんなこと気にしないだろ、ミオは」
眠くて眠くて、口もはさめない私の代わりにシリウスが言ってくれてるみたいだ。
「僕が、気にするんだ」
リーマスは優しいけど、優しすぎる。
もっと強欲に求めていいのに。
好きな物は好きと言ってもいいのに、言わない。
いつも相手を先に考えてしまってる。
それは残酷な優しさ。
その夜、女子寮に戻ってから。
私はリリーの胸で泣いた。
優しいリーマスも好きだけど、それだけじゃないよ。
全部のリーマスが好きなのに。
「私、闇払いになるよ」
もっと危険なことがあれば、リーマスは私を求めてくれるかな。
一緒にいさせてくれるかな。
リリーは怒ったけど、思いっきり泣かせてくれた。
涙は心を浄化するから。
全部流してしまう方がいいって。
どうしてリーマスなんだろう。
たぶん、シリウスを好きな方が楽だったかもしれない。
でも、それでも私はリーマスじゃなきゃイヤなんだ。
リーマスが、好きで好きでどうしようもないくらい好きです。
「そんなに好きなのにどうして言わないの」
言ったら、リーマスはきっと困る。
好かれてる自信はある。
でも、壊れ物みたいに大切にされるのはイヤだ。
ガラス細工みたいに愛さないで。
そのままのリーマスで愛してほしい。
どうしてどうしてこんな夢ばかり過ぎてくんだろう。
リーマスは優しくて残酷だった。
二人とも臆病だったね。
臆病すぎて、進めなくなった。
もしも時間を撒き戻せたら、あの頃に戻りたい。
馬鹿げた願いとわかっているけど、もう一度やりなおしたい。
もう一度、皆に会いたい。