Teach the Truth
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食後のコーヒーを出して、大量の新聞と共にシリウスを部屋に残し、僕は寝室に戻った。
ベッドには大人しく横たわるだけの人形がひとつだけ。
長い髪はうねるままにベッドに流れて川を作る。
動かない、闇の川だ。
白い頬に手をそえ、そっと口付ける。
儀式のように。
「ミオ、薬の時間だ」
虚ろな瞳が開く。
でも、光はそこに宿らない。
言う通りに動いてくれるけど、でもそれだけだ。
口を開けさせ、薬を流し込み、飲み込ませるために水を、飲ませる。
一度舐めてみたことがあるけど、すごく苦い。
でも、彼女の表情は揺らぐことなく飲み込んでしまう。
ただ空虚で、ただ静寂がそこにあるだけだ。
「ミオ」
でも、名前を呼ぶ。
「ミオ、僕は……」
言いたいことが、言えないままの言葉がある。
「僕は……っ」
虚ろな人形に言いたいんじゃない、生きて笑ったり怒ったりするミオに云いたいんだ。
零れ落ちる水が、ミオの髪に落ちて、一瞬だけ小さな透明の珠となり、吸い込まれて消えた。
闇はまだ14年前の禍根を残したまま、晴れていない。
* * *