泣き虫
□一章
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「おっきぃ…お金無駄使い。」
だって入り口の門,僕の三倍。
清太郎さん,お金使うとこおかしい。
なんて思っている僕ー丸岡悠夜はほえーっと口を半開きにしながら門を潜る。
さっき門の横に置いてあったインターフォントとかすっごく高そう…。
はぁ…なんかもう
「めんどくさい…」
此処まで来るのに何度同じ事を呟いたか。
今日から通う事になる水來学園までの道のりはあまりにも長かった。
電車で3時間(おかげで腰が痛い)
そこから船で30分
その後4時間徒歩
途中で倒れなかったことに感心する。
此処は日本の海に浮いている人工島「水來島」の真ん中に建ててある水來学園。
家柄の良い所の親達が自分の子供の教育の為に作られた島だ。
そこには本屋や喫茶店,コンビニ等も建ててある。そういう店で働いている人以外は皆学生。
…お金使うとこおかしいって思ってるの僕だけ?
そんなことを考えている僕も今日からこの島で三年間住むことになる。
でも僕はお金持ちとか家柄が良いわけではない
。
それより,学園の中に入ったのは良いが…
「理事長室って何処?」
もちろん答えてくれるような人は一人もいない。
天気が怪しくなってきた…はやく誰か探さないと。
「案内してあげようか?」
「?!」
突然後ろから声がする。それに驚いて肩が跳ねる。
こいつ気配殺してた…!
バッと後ろを振り返りながら素早く後ずさる
いくら他の事を考えていても周りの気配には敏感な僕が,こいつの気配は俺から3メートル位の距離まで近づいて来ても全然気付かなかった。
注意しながら相手を観察する
人工物ではないさらさらな薄めの紺色のかみにおそらく
カラーコンタクトであろう青い目が髪と非常に合う。
髪の間から見える右耳にはシンプルな黒い薔薇の形をしたピアスをしている。
整った顔はとても柔らかい感じだが笑顔にとても違和感があった。
作り笑いをしているのだ。
普通の人はとても頼りになる人だと信頼してしてしまうだろう。だけど悠夜は逆に怖い,と感じた。
彼は苛つきいていて彼より背の低い僕は見下されている様な気がした。
「…いい,です。別に。」
「そういう訳にはいかないんだよね。僕は理事長に頼まれてきたからね。僕と一緒に来てくれないと僕が困るんだよね。」
清太郎さん……っ!!!
覚えたての敬語で断ってみるが意味が無かった。
「…よろしく、おねがいしマス。」
「こちらこそよろしくね。」
これで合ってたはず。通じたから。
こうしてぼくたちは学園の奥へと進んでいった。
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