テニスの王子様。

□1.始まり
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4月某日
立海大学付属高校入学式












「・・・ここどこ!?」






どうも、小橋夢です。




早速ですが!





迷子になりました・・・








早めにきて桜でも見よう


なーんて思って
写真撮っていたら


里奈とはぐれちゃった・・・



辺りを見渡しても誰もいないし。




会場どこぉぉぉ!?






・・・て、ゆーか


立海大広っっ!!




中学も高校も大学も同じ所にあるんだもの。

私らが住んでた田舎じゃ考えられないことだわ。






・・・なんか焦ってきた。どうしよう。





涙目になりながら辺りを見回していると、道の真ん中に小さく可愛らしいお花を見つけた。


思わず顔がほころぶ。



可愛いなぁ・・・





携帯で写真を撮って、ふと思う。
それがそのまま口に出た。








「こんなところにあったら、踏まれちゃうよ」








道のど真ん中にあるんだもの。
誰かに踏まれちゃうかもしれない。



すると運良く、わきの花壇に置いてあるシャベルを見つけた。

それを手にし、しゃがんでその花を根から土と共に採り、端の方に埋めた。


ほっと一息・・・・・・って、そんな場合じゃなかった!!



バッと立ち上がり、後ろを向く。






え!?







なんか、すごい近くに人いるんですけど。
1メートルくらい先。


なにこの人誰!?
髪青っぽい!
先輩かな!?
てかいつからいたの!?


状況がなんだかよくわからなくなってきて慌てていると、その人が言葉を発した。





「何をしているんだい?」









・・・声、が。








「綺麗・・・・・・」







気づいたら、そう呟いていた。




「綺麗なこえ・・・・」





その人の顔を、ぼーっと見つめる。




あ、良く見たらこの人肌も綺麗。
ていうか白っっっ!!!



私より大分白いよ、え、男の人だよね!?




・・・男に負けた。がくん。




肩を落とす私に、この綺麗な方は笑いかけてきた。
そして、綺麗な声で話す。



「ふふっ、ありがとう。声が綺麗だなんて、初めて言われたよ」



・・・はじめて?



なんですとーーー!?


私は目を見開いた。




だって!だってだよ!!



こんなに美しい声してるのに、周りの人たちはそう思わなかったってことでしょ!?



ありえない!!!!



って、やばい、私今確実に厳つい顔してるわ・・・


そう思った瞬間、
「ぷっ」て声が。ん?





「あっはっはっは!」





・・・美声さんが笑い出しました。
笑い声も美しい・・・!!





・・・








・・・・・・










・・・・・・・・・・・









・・・・あれ、ちょっと盛大に笑いすぎじゃないすか?



で、思わず。







「ちょっと美声さん!なんでそんなに笑っていらっしゃるの!?そこまで変な顔してたかな私!?」




そう言うと、また笑う美声さん。





「あっはっは!美声さんって俺のことかい?面白・・・ぷっ」






・・・初対面なのに。



この人あれだよ、ツボに入ると抜けなくなるタイプ、絶対。




しばらくして、ようやく笑いが収まったらしい美声さんは
一度息を吐いて話し出した。



「で、何していたんだい?察するところ迷子かな」


「・・・はい」




わかってるんだったら、聞かないでほしい。かっこ悪いから。

そう思うプライドの高い私。




肯定するのも恥ずかしくて、怪訝な顔をしている私を見て、美声さんはにっこり微笑んだ。

美しい・・・



「俺が案内するよ。ここは中等部だから、高等部はあっち」



言いながら、彼は私が向かっていた方角とは全くの逆に進みだす。


悔しい!私方向音痴じゃないはずなのに・・・!!


って、がっかりしてる場合じゃないよ美声さんについていかなきゃ。



小走りして彼の隣に行く。



「あの、本当にごめんなさい・・・」


「いいんだ、どうせ俺も向かうところだったし」


「2年生ですか?」


「ううん、1年」


「えっ!・・・じゃあ、ここの中学を卒業したとか?」


「うん。だからタメ口でいいよ」


「わかりました!あっ、間違えたわかった!」



ふふ、と優しく笑う彼。
・・・モテそう。



って、話題なくなって沈黙しちゃったよ!
何か話さなきゃ。



「美声さん、肌綺麗だよね!私の100万倍きれ・・・ヴっ」



ダメだ・・・自分で言って悲しくなってきた。

盛大なため息をつく私を見て、また笑う美声さん。




「嬉しいけど、それは褒め言葉としては受け取れないなぁ。俺テニス部だし」






・・・テニス?



え、テニス!?





この美しい方が!?





私が口をあんぐりと開けて声を出せずにいると、美声さんはまたまた笑った。



ほんと何回笑ったのこの人ひどくない!?



じゃ、なくて。



「私もテニスやってたよ!でも、美声さんのような美しい人がテニスしてるのは見たことない」




そう言うと、なぜか美声さんは嬉しそう。

なんでだろ?



「ふふ・・・ところで、そろそろその『美声さん』って呼ぶのやめてくれないかな?恥ずかしくなるから」


「恥ずかしがることなんてないでしょ!美声なんだもん!!」


「うーん、そういう意味じゃないんだけどな」



・・・どーいう意味??




「俺は幸村精市。君は?」


「、小橋夢」


小橋って苗字好きじゃないから、言うとき小さい声になっちゃった。


「夢ちゃん、って呼んでいいかい?」




あ。






察して、くれたのかな。


気が利く良い人。



自然と頬が緩んだ。




「ありがとう!えっと、幸村君!」



幸村君も、優しく微笑んでくれた。





って!

しゃべってる間に
入学式の会場についてる!!






「夢ちゃーん!!やっときた!!」




そう声がして辺りを見回すと、怒り気味の里奈がこっちに向かってきていた。



「里奈ーーーっ!!!会いたかったー!」


思わず手を振ってそう叫んじゃった。


挙げた手を下ろして、幸村君の方に体を向けた。



「幸村君、本当にありがとう!助かりました!!」


そう言うと、笑顔を返してくれる幸村君。



「良かったよ。また迷子にならないようにね」


「はい!ふふ。それじゃあね。ありがとう!」


お礼をもう一度言って、里奈のもとへ急いで駆けていく。

怒られる・・・確実に。













そのとき




私が気づくはずもなかった






自分に向けられる視線に





彼とのこれからに
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