テニスの王子様。

□2.新しい仲間
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俺は幸村精市。









先程入学式が終わり、今は新しいクラス―
1‐Cの自席に皆座っている。




担任がまだ来ていなく、喋り声が教室に響いていた。




教室を見回すと――今朝迷子になっていた女の子、夢ちゃんが同じクラスにいた。



見つけた瞬間、ほんの少し胸が高ぶった。




だが本人は、前の席の子と仲良く話していて、こちらに気付く気配はない。












彼女は、不思議な子だと思う。







声が綺麗、だとか…




今まで俺は容姿が綺麗とかって女子に言われてきた。




ファンクラブを勝手に作られて、練習中にもキャーキャー煩くて。





一言で言うと

女子が嫌いだったわけなんだけど。





そんな俺があの子に話しかけたのは




小さな花に、


“踏まれちゃうよ”


と言った彼女が気になったから、かな。




俺ガーデニング好きだしね。









…随分と言い訳じみたこととを考えてしまった。






左側の席の丸井ブン太を見ると
…あれ、ブン太夢ちゃんの方見てないかい?











……そういうのは、先に手を打っておかないと、ね。








「ブン太、どこ見てるの?」






俺が笑顔でそう話しかけると、ブン太はビクッと肩を震わせた。




そんなに驚く程集中して彼女を見ていたのかい?








「べっ…べべ別にどこも見てねーよ!ぼーっとしてた!!」





あーわかりやすい。

中学の時からだけど、ブン太の反応は本当にわかりやすい。






あれ、ブン太手に何か握ってる。




飴の袋?






彼はかなりの甘党だからね…




でも、空っぽの、ごみを握ってるのなんて初めて見た。









「ふーん。じゃあその飴の袋は?」






俺が何気なくそう聞くと、ブン太は肩をビクッと震わせた。



なんか顔赤くなってるし。






「こっ…これはだな、…あ゛ー」






ブン太がまた夢ちゃんの方を向いた。














…ん?


違う。よく見たら、夢ちゃんと話してる女の子の方を見てる。






そういうことか。
すっきりした。



これは…後々利用できるかもしれない、ね。




「もういいよ、ブン太。ごゆっくり」






笑顔でそう言うと、ブン太の顔が紅くなった。



俺は何でもお見通しだよ。
まあ、彼もまだ気になる程度なんだろうけど。








再び夢ちゃんの方を見る。


すると今度は、ばっちり目が合った。





彼女は「あっ!!」と呟くと、
恥ずかしそうに笑って
小さくお辞儀をしてきた。








なんだか不思議な気分だ。



花が咲いたときのような…そんな感情が湧き上がる。






なんだか、余裕がなくなってしまう。







俺は、平静を装い微笑みを返した。
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