テニスの王子様。

□15.期待
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夢が、「好き」と、泣きながら。





あまりにも嬉しすぎて、
言葉では表現できないような思いで心が満たされた。


理性なんか、簡単に飛んでしまう。



そして、そのまま、目の前にいる夢を抱きしめた。






「せ、精市、わわわ私、汗かいてるから…!!」






そう言う夢をおかまいなしに、さらにきつく。







「好きだよ、夢」



「…え」



「大好き」






腕を解いて微笑む。



夢の目がこれでもかってくらいまんまるになって。



少しの沈黙のあと、彼女の目から次々と涙が溢れ出た。



その涙を、頬に触れて、親指で拭う。



すると彼女は、泣きながら、これまで見た中でいちばんの笑顔を見せた。






可愛い。




また、抱きしめたい衝動に駆られる。

けどそれを抑えて、口を開いた。





「…俺から、告白する予定だったんだけどな」



先に言われちゃった、そうつけ足すと
みるみるうちに真っ赤になる夢の頬。



「わっ…私…本当はずっと言わないつもりでいたけど…でも」



まっすぐに俺を見て。





「精市と、あのままでいるなんて嫌だったから。…フられるよりも、嫌だったから」


あの、気まずい状況のままでいるのは、嫌


それは俺も同じだった。


だけど、

白石や仁王と話している夢を見て、

自分のなかのもう一人を知ってしまって、


怖くなった。


もう一度近づいたら、崩れてしまいそうで。

また、触れてしまいそうで。


夢の気持ちをお構いなしに、抱きしめてしまいそうで。



けれど。


「……嬉しいよ」




夢の心のなかに、俺が、いてくれた。



「ありがとう」



お礼を言うと、再び彼女の頬を伝う涙。



「…わたし、ね。今日も、浴衣着るときとか、お化粧するときとか、想うのは、やっぱり精市だったの」



今は、ぐちゃぐちゃになっちゃったけど


苦笑いをしながらそう言った夢。







幸せだなと、思った。





好きな人と思いが通じ合うことは、こんなにも、。




衝動に勝てなくなり、もう一度抱きしめて、少し意地悪を言ってみる。




「白石に謙也、周助は化粧頑張った夢を見たのか…妬けちゃうな」


「えっ…照れます、あ、や、…嬉しいな」



そんなこと言う夢にクスクスと笑った。



「ま、これからたくさん見れるだろうから良いけどね」



これから、たくさん思い出を作ればいい。




今日から夢は俺のだからね。




夢も微笑んだところで、立ち上がった。





「とりあえず、怪我したとこ洗いにいこ?」




手を差し出すと、照れながらもぎゅっと手を握ってくれた。
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