テニスの王子様。
□10.距離
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遠い。
果てしなく、遠い。
そう実感した。
あかん。
あかんわ。
どないしたらええんや。
嫉妬、なんて。
無駄や。
かっこ悪いわ。
わかってるのに止められへん。
ぐるぐる、ぐるぐると
渦を巻く。
それは羨望や。
嫉妬であり、羨望でもあるんや。
こっちを向いてほしい、
キミに。
いつか
堤が壊れて溢れ出てしまうかもしれない。
どうすれば?
…努力、しかないんやろか。
割り込む隙はあるんやろか。
「白石、何ぼーっとしてはるん?」
!
「…なんや、謙也か。今考え事してんねん、そっとしといてや」
「なんやとはなんや!」
頼むわ、謙也、
今の俺と話さんといてくれ。
崩れてしまうかもしれんねん。
黙っていると、謙也は静かに口を開いた。
「…俺なぁ、白石が考えてること多分わかるで」
思わず、あからさまに驚いた顔をしてもうた。
「ははは、そない驚かんでもええやん。もう9年一緒におるんや、気付くやろ普通」
そら、そうやな。
俺も謙也の変化には気づくし。
「白石!!!!」
「お、おぅ」
いきなりデカい声出さんといてくれや。
びっくりしたわ。
「白石は、イケメンや!!」
「は!?」
「性格もごっつええ!!」
「いやいきなり何言うとんねん!」
「才能あるのに努力家や!!」
「……」
もう何言うても無駄やな。
「せやからな、モテるんや!必然や!必然やから全然羨ましくないで!いやちょい羨ましいけどな!!」
結局羨ましいんかい。
「自信持てや、白石!!」
…!
「白石は優男やねん!ええやん、たまには自分のために動いても!!誰も悪く思わん。俺はな、白石には幸せになってほしいんや!!」
……謙也、
俺、頑張ってええんか?
例え人を、彼女を
傷つけることになっても。
「シケんといてくれ白石!!恥ずかしなってくる!!!!」
ほんまや、赤くなっとる。
「…ふっ、ははははは!」
なんや、俺、くだらんなぁ。
「白石、壊れたか!?俺のせいか!?」
「ちゃうちゃう、ありがとな、謙也!」
謙也は一瞬きょとんとして、笑った。
「ようわからんけど、よかったわ!ほな、さっさと枕投げ始めるで!!」
気持ちが、軽くなった。
俺、頑張るわ。
頑張ってみる。