その他文
□幸せになりたい
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「キュゥべえ、ひどい話だね」
きらきらと光るソウルジェムを月にかざしながら呟く。
すると隣にゆらゆらと尾を揺らし同じようにソウルジェムを眺めていたキュゥべえがなんてことのないように言う。
「何がだい?」
まったく、こいつめ。
相変わらず人の感情とやらは理解できないらしい。
まどかの気持ちもさやかの気持ちも、なに一つ伝わっていないんだろうと苦笑が浮かんでしまう。あぁ、次が綺麗。
「私の魂はこっちにあるんだ」
「魂、そうだね。その言い方は正しいのかもしれない」
「ゾンビ、かぁ」
生がない、このからだ。
なんだろう、実感はわかないがじわじわと来るものがあるからきっとショックなんだろう。
浮かべたソウルジェムはただきらきらとしていて、これが魂の輝きだと思うと切なくもある。魂って、こんなんか。こんなもんなのか。
「まったく、僕には分からないよ。何故生のあり方に君たちはこだわるんだい?」
心底分からないかのような声音。やはり人の考えはよそのものには分からないのか。
それとも頭脳が高いがゆえの結果か。どうにせよ今更どうも出来ない話なのだから、仕方ない。
私はソウルジェムをポケットに詰め込みはぁとため息をついた。
なんだか、なぁ。
魔法少女って、こんなもんなのか。
あまりにイメージが違いすぎる。
「ねぇキュゥべえ」
「なんだい」
「魔女を倒せば、いいんだよね」
今さらの質問。
「そうだよ」
「だよね」
「一体どうしたんだい?契約時にその話はしたろう」
確かにした。したけれど、なんだか不安になってしまった。
「いや、やっぱ正義のヒロイン相手には敵がいないと」
大丈夫。正義のヒロインがいて悪がいて、そしてハッピーエンド。
これがある限り私はまだ大丈夫。大丈夫、なんだ。
さやかのようには、なりたくない。
「私は、いきてやる」
だから今はただ王道的な物語を自分の手で綴ろう。そう、決めた。
◎しにたくないんだ
(さやか、幸せを啜る私を許して)