離れた空

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車が止まったのは1つの病院だった。
琥珀は車から降りるとディーノに案内され1つの病室に来た。
ネームプレートには“沢田家光”と書かれていた。



デ「…準備はいいか?」
「……あぁ…
跳ね馬、頼みがある」
デ「なんだ?」
「……最悪の場合、俺を殺してでも止めてくれ」
デ「!!お前…」



ディーノは琥珀の覚悟を見て頷いた。
そして扉を開いた。



デ「家光さん、入るぜ」


ディーノが病室の中に入ると琥珀も深呼吸をしてから入った。
病室の中を見るとそこにはベッドの上で横になっている沢田家光がいた。
その姿を見て琥珀は拳を強く握った。


デ「家光さん、起きてんだろ?」
家「……あぁ」



家光は返事をするとゆっくりと起き上がった。
ディーノは家光が起き上がるのを手伝い、座らせた。
そんな家光を琥珀はしっかりと見た。


家「……こうやって面と向かって話すのは初めてか、琥珀」
「…………」


琥珀は俯き、言葉を発さなかった。



家「まぁ、無理もない。お前が俺に怒りと殺意を持っているのは仕方のないことだ」
「………俺は…」



琥珀は俯いたまま言葉を発した。


「俺はお前に…いくつか聞きたいことがある」
家「…なんだ」



琥珀はさらに拳を強くにぎり深呼吸をした。


「なんで……あの時、俺を…見捨てたんだ…っ」
家「……」
「お前はあの時、俺をボンゴレの医療チームに渡し、俺が嫌だと抵抗したにも関わらず…俺を見捨てた…!!」
家「………」


琥珀は普段誰も見たことがないほど声を荒げて家光を見た。



「俺は言ったはずだ…!!嫌だって!!
何度もお前の名前を呼んだはずだ…!!
俺は…!!あんな怖いとこに1人にしてほしくなかった…!!」


琥珀に目にはうっすらと涙がたまっていた。


「お前はいいかもしえねぇが…俺は不安だったんだ…!!」
家「琥珀…」
「いきなり知らないところに連れてこられて…知らない大人たちに囲まれて、抑え込まれて…いきなり痛い思いをして…!!
お前に俺の苦しみが分かるか!?1人で苦しみに耐える辛さが…俺を見捨てたお前に分かるのか…!?」



琥珀が息を乱して家光に向かって言うと家光が俯き話し出した。


家「お前には、本当に悪いことをしたと思っている。
何も告げずに苦しい思いをさせ、支えてやれず不安な思いをさせたな…
だがな、これだけは知っててほしい」


家光は琥珀の目を真剣な目で見た。


家「俺は一時もお前のことを忘れたことはない。
それだけは覚えておいて欲しい」
「っ…んなの…信じられるかよ!!
お前は俺に一度も会いに来なかった…!!
少しでも俺の事を忘れてなかったら、会いにこれたはずだ…!!」
家「……俺は会いに行けなかった」
「なぜだ!?なんで…!!」
家「逆に会いに行ったところで、お前はこの俺とまともに話せなかっただろ」
「っ…!!」


琥珀は何も言い返せなくて強く拳を握るしかなかった。


家「それに破邪の炎を使いこなすためには強靭な精神力が必要だった。
小さいお前がすぐに精神力を鍛えるためには“俺への憎悪”が手っ取り早いと考えた」
「あんたへの…憎悪?」
家「そうだ。俺を憎み、殺したいという思いがお前が破邪の炎の辛い試練に耐えるきっかけになってくれると俺は信じた。
お前が耐えられると、俺は信じたんだ」
「っんなの……お前の勝手な……!」
家「あぁ。俺の勝手なエゴだ」



琥珀は家光の真剣な眼差しに歯を食いしばり、俯きながら拳を強く握った。
すると家光はまだ負傷している体を無理矢理を起こし琥珀の前まで歩いてきた。
そして、



ぎゅっ



「っ!!」



家光は琥珀を抱きしめた。
琥珀は突然のことに驚き動けなかった。


家「本当は早くこうしてやりたかった。
早くお前を迎えに行って一緒に居てやりたかった」
「っ………」
家「許してくれとは言わない。お前に許してもらえるとは思っていない。
だが、これだけは覚えておいて欲しい。
俺は、お前を忘れたことなんてない」
「っ……」



琥珀は抵抗しようと拳を握ったが抵抗することが出来ずされるがまま抱きしめられたのだった。





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