FALLEN ANGELS
□第一話
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携帯端末がバイブして着信を告げる。
電話だ。
モニターには、二十歳くらいだろうか、大きくウェーブしたブラウンの髪を胸まで垂らした女性が映っている。
「はい?」
『初めまして。 ソレスタルビーイングの戦術予報士、スメラギ・李(り)・ノリエガです』
「聖(ひじり)・コクトーです」
『ごめんなさい、作戦コードの合間にあなた達と合流してもらうつもりだったんだけど、敵に囲まれちゃったらしくてね。四人とも、ここの地理には詳しくないから、そっちから行って助けてくれないかしら?』
スメラギの顔がモニターの左上に移動し、地図と四人の顔写真がアップされた。
表示された場所はかなり入り組んだポイントだ。
向かっている間に敵と鉢合わせる心配はないだろう。
「了解」
その場から動かないように伝えるよう言うと、通信を切った。
と、同時に肩をたたかれれる。
桜・雲雀塚(さくら・ひばりづか)、四年前から寝起きを共にしている同じ年の少女だ。
「何て?」
「お迎えを助けに行くことになった」
そう言って、窓から見えるビルの一つを指差す。
彼女達のいる軌道エレベーターの展望台からは少し離れた建物だ。
「走った方がいいね」
桜の声に頷きながらエレベーターに乗り、一階のボタンを押した。
二人を乗せた箱が降下をはじめる。
桜は横目でほんの数センチだけ背の高い相方を見た。
ジルベール・C・葉月(はづき)、コードネーム 聖・コクトー。
彼女は私達がこれから始めることをどう思っているのだろう。
あまり普段と変わらない様子に少し戸惑う。
だから、必要ないと分かっていても桜は確認するように呟いた。
隣に声が届かないように。
「変えようね、ジル」
その後に続く言葉を抑えて自分の中だけで響かせる。
「あぁ」
あるはずのない返事に驚いて横を見る。
ジルベールは目を閉じていた。
それをゆっくり開いて、桜に向き直る。
「変えよう、世界を」
ジルベールの声に、桜は大きく頷いた。
ふいに箱が動きを止めた。
開いたドアから光が射し込む。
その光に二人は駆け出して行った。