凜華録
□一片
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巡察が終わりぶらぶらと散歩から戻る帰り道、屯所への最後の角を曲がった瞬間、何者かとぶつかった。
慌てて謝ったが相手から返事は無く、僕にもたれかかったまま崩れ落ちてしまった。
流石に素通りする訳にもいかず、抱き抱えて屯所内の自室に運び、布団に寝かせてみたのだった。
医者に連れていけばいいものをそうしなかったのは、魔が差したとしか言い様が無い。
…土方さんに知れたら、またどやされるんだろうなぁ。
『新選組 鬼の副長、土方歳三』の顔を思い浮かべ、苦笑する。
しかし、済んでしまったことはどうしようも無く、ただぼんやりと自分の布団で寝る少年を見つめた。