凜華録
□一片
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体の割にはかなり軽かったなどとどうでも良いことを思い出す。
ふと耳を澄ますと、聞き慣れた足音が聞こえた。
噂をすれば何とやら、だ。
しかも都合の悪いことに、僕の部屋の前で立ち止まる。
「総司、居る...」
返事を待たずにふすまを開けた土方さんの声が途切れた。
視線が僕の後ろで固まる。
「お前っ、何してんだ?」
「何って、見て分かりませんか?」
「つまんねぇこと言ってねぇでちゃんと説明しろっ!」
土方さんは反射的に憎まれ口を叩いた僕の頭を叩いて隣に座った。
柳眉にしわを寄せた彼は僕の説明が済むと、さらに顔をしかめた。
「どうすんだよ、こいつ」
そんなことを聞かれても困る。
僕自身、何故連れて来たか分からないのだから。
「どうしましょうか?」
的を得ない僕の返事に土方さんは溜め息を吐いた。
「一週間だ」
「え?」
「一週間経っても目覚めなきゃ、諦めて医者に預けろ」
「いいんですか?」
てっきり、追い出すんじゃないかと思っていた僕は驚いた。
「寝かせちまったんだからしょうがねぇだろ」
そう言うと土方さんは不機嫌そうに部屋から出ていった。