SEEDS
□一章
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一体どうなってるんだ。
いつものように職員室の前に自分が担任を持つクラスを覗くと、転校生が来るという話題でもちきりだった。
職員室に行けば、我が二年一組に転校生が来るという。
…どうして教師の俺が知らないことをガキ共が先に知ってるんだ?
「校長が呼んでましたよ。 ま、いい子だといいですね」
まったくだ、と思いながら校長室へ足を運ぶ。
「転校生が来たとか。」
ドアを開けるなり、自分より十も若い校長に本題を切り出す。
「夕裂 京(ゆうざき けい)さんです。 編入試験はほぼ満点でした」
うちは進学校ではないが決して簡単なテストはしない。
感心しながら基準服の上にパーカーを羽織った転校生を眺める。
端整な、そしてとても中性的な顔だ。
男か女か分からない顔が微妙に歪んでいる。
緊張しているせいだろう。
「まぁ、適当に上手くやってくれ」
教師にあるまじき言葉を吐きながら、夕裂を促して教室に向かう。
ホームルームのチャイムはとうに鳴り終わっていた。