庭球のお話

□笑顔になる話
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「うえええ、ごめんなさーい!ううっ、最近どもってばっかり、うううええ、だったのは、ひっく、謙也くんと話すと、うっ、ドキドキして、うっく、上手く話せなかったんですぅぅうえええん、ごめんなさーい!さっきも、ひっく、なんかいっぱいいっぱいに、なっちゃっただけで、うぅ、別に謙也くんが何かしたとか、そんなんじゃないし、うっく、追いかけてきてくれたのは嬉しいし、ひっく、撫でてくれる手も嬉しいし、うぅ、もう大好きなんだようえええん!」

大号泣の上、告白までしてしまった。さぞかし謙也くんは大迷惑だろう。申し訳ない気持ちと、気持ちを伝えてスッキリした気持ちでいっぱいになる。

突然、謙也くんに腕を引っ張られた。え?と思っている間に抱き締められる。首筋に謙也くんのほっぺたが当たってる。いいにおいがする。背中にまわされた腕が力強い。全部を理解してようやく言葉が出た。

「ちょちょちょちょちょちょ」
「名無し…このまま怒らんと話聞いてくれへん?」
「え。…う、うん。なに…?」

抱き締められてパニック状態だったが、謙也くんの真剣なトーンを聞いて、冷静になった。
抱き締められて舞い上がってる場合じゃない。落ち着け自分。ちゃんと話聞かないと。
 
「…………………………」
「謙也くん?大丈夫?」
「………俺お前のこと好きやねん。ほんで、実は前から名無しの気持ち知ってた」

 な ん で す と ?
てんぱる私。謝る謙也くん。なんとか話を聞いて状況を理解するとこういうことだった。
謙也くんは同じクラスになった時から私のことが好きだったそうで(これ聞いた時また泣きそうになった。堪えたけど)、エクスタ野郎を通じて仲良くなって、告白しようか悩んでる時に、エクスタ野郎から私が謙也くんに惚れてることを伝えられたそうだ。そしてエクスタ野郎に「どうせやったら名無しのから告白されるよう頑張ってみたら」と言われ、今に至ると。

「…………」
「…………名無し?…ごめん!怒ってるやんな!ほんまご「あんの、エクスタ野郎!!!」
「え」
「あいつ絶対面白がってたんだよ!元凶はあいつじゃん!うわ、腹立つ〜!」
「ちょ…名無し…落ち着き」
「いやいや、落ち着いてらんないよ。あいつマジでなんなのマジで」
「ちょ、ちゃうねん!白石は悪ない!」
「悪いよ!」
「ちゃう!悪いんは俺やねん!…白石に名無しの気持ち聞いて舞い上がって。
あん時調子乗らんと素直にお前に気持ち言っとけば、こんな泣かすことなかったのに。ほんまごめん!」
「……………………謙也くん…」
「それに、だんだん不安になってもうてん。白石の冗談やったんちゃうんかとか考えるし、名無しが白石と言い合いしてんの見て、なんか腹立ってくるし。俺と話す時どもるのは俺のこと嫌いやからちゃうんかとか考えてしまって。……………もう、俺最悪やん。ほんまごめん」

背中にまわしてた腕を緩めて、二人の間にちょっと距離を作って目を見て謝ってくる謙也くん。ああ。また悲しそうな顔してる。そんな顔しないで。私は謙也くんの笑顔が好きなのに。

「…謙也くん」
「ん?」
「私謙也のこと大好きだよ。だからそんな顔しないで」
「名無し…」
「私ね、謙也くんの笑顔大好き。謙也くんの悲しそうな顔見ると泣きそうになる。だから謙也くんにはいつも笑顔でいてほしい。そのためなら私なんでもするよ」
「……俺がアホなことしたん許してくれる?」
「あったりまえじゃん。ていうか、アホなことしたなんて思ってないよ」
「……ありがとう」

またぎゅっと抱き締められる。私も謙也くんの背中に腕をまわす。あー、いいにおいする。幸せ。
ちょっとだけ腕の力を緩めて、お互いの額を軽く合わせる。凄い近い距離で、優しい顔の謙也くんが言う。

「もう泣かせたりせん。大事にするから付き合ってください」
「…はい!」

二人揃って笑顔になる。うん。やっぱり謙也くんは笑顔が一番素敵だな!



(おー、やっと付き合ったんか)(このエクスタ野郎!あんたのせいで!)(こら!名無し!白石にキレたらアカン!)(そうやで。俺のおかげで付き合ったようなもんやん)(ちがう!あんたのおかげでややこしくなっただっつの!)(いやー、お前ら見てて面白かったねんもん。あ、クラスの子らにはお前らの気持ちバレバレやったらしいで)((!?))


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