春うらら.

□第四十一話
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10月も半分が過ぎ、カーディガンが手離せなくなってきた。10月でこの寒さだったら11月はマフラーとか必要かもしれないな。と思いつつ、ダラダラと図書室で作業を進めていく。
実は今日、図書委員会で本の整理をするらしく、図書委員は全員集合ということだったのだが、うちのクラスの図書委員は風邪でお休み中。そのため日直だった私が代わりに行くことになり、作業に加わっているのだ。
この作業やってみて思ったけど、意外に面倒くさいな…。滅多に借りられない本を書庫へ移動させ、新しい本を入れるだけなんだけど、目的の本を探すのって意外に大変。指定の場所にある本は良いけど、みんなが適当にあちこちに直すものだから、指定の場所に無かったりするし…。えーと、次の本はどこだ…?
委員長から手渡された回収リストを片手に一つ一つ本棚を確認していく。あっちをウロウロこっちをウロウロしていると、いつの間にか図書室の奥の方まで来てしまっていた。
立海の図書室は無駄に広い。その無駄に広い図書室の奥のになるとほとんど人気はないし、当然人の話し声なども聞こえないため、シーンと静まりかえっていて少し不気味だ。
…静か過ぎるって怖い…。サクサク終わらせて、サッサとここから離れよう。
恐怖心を誤魔化しながら、次々を棚をチェックしていく。すると、本棚のすぐ傍にある椅子に仁王さんが座って寝ているのが目に入った。
自分以外に人がいるとは思っていなかったので、少しドキッとした(チキンハート的な意味で)が見知った人だったので、ホッと息を吐く。
…び、ひっくりした…。仁王さんこんなところで寝ないでよ…。まぁ、静かだしグッスリ眠れるかもしれないけど………あれ?ていうか、部活行かなくて良いの?
制服姿で本棚にもたれて眠っている仁王さんに近づき小声で声をかける。

「おーい……仁王さーん……」
「……すー…」
「仁王さーん……部活行かなくて良いのー…?」
「……すー…」

駄目だ。爆睡してる。寝息しか聞こえない。うーん、どうしよう…?起こすべき?放置するべき?
悩みながら、寝ている仁王さんの顔をマジマジと眺める。
睫毛ながー。お肌もツヤツヤだし、鼻筋も通ってる。うーん、改めてこう見たらイケメンだよね。つい忘れがちだけど。あ、仁王さんって口元にホクロあったんだ。へー、新たな発見。髪の毛も綺麗に染めてあるなあ。痛んでるところとかあるんだろうか。
滅多に見ることのできない寝顔を存分に堪能していると、突然仁王さんの目がパチリと開いた。

「………」
「………」
「……名無しちゃん?」
「ゴ、ゴメンナサイ」
「?」

寝起きの仁王さんと無言で見つめ合うこと数秒。仁王さんに名前を呼ばれ、反射的に謝ってしまった。なんだか覗きをしていたのがバレた、みたいな心境だ。恥ずかしい。

「なんで謝るん?」
「…ちょっと反省してるだけ」
「? なんの反省?あ、俺の寝顔見とったこと?」
「わぁっ!ゴメンナサイ!」
「ちょ、名無しちゃん声デカイ」
「…ゴメンナサイ…」

重ね重ね恥ずかしい…。図書室ということを忘れて大声で謝ってしまった…。ていうか、寝顔見てのバレてたのか……。あーもー……、恥ずかしい…。
恥ずかしさで少し顔が火照ってきたので片手でパタパタと顔を扇いでいると、仁王さんがじっと見つめてきた。
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