春うらら.

□第四十五話
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家を出て、外の寒さにウンザリしながら学校へ向かう。
ううう、寒い…。コタツでも背負って学校に行きたいぐらい寒い。
心の中でそんなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。

「名無しちゃん」
「? あ、仁王さん。おはよー」
「おはようさん」
「今日も寒いねぇ」
「そうじゃのぅ。明日は雪が降るらしいぜよ」
「うわぁ…やだやだ」

喋りながら仁王さんの顔を見ると、笑っているように見えた。鼻までマフラーで覆っているので口元は見えないが、目元が笑っていたので「何笑っているの」と問いかけると「着膨れしてて面白い」と言われてしまった。

「寒いんだから仕方ない」
「そのうち、着膨れしすぎてダルマみたいなるぜよ」
「さすがにそれはない」
「プリ、」

なんだかんだと話をしていると、下駄箱に着いた辺りで「今日の昼、弁当交換して欲しいナリ」と言われたので「良いよ。んじゃ、お昼に部室集合ね」と言って手を振り別れた。





「ごちそう様でした」
「はい、お粗末さまでした」

部室にて仁王さんとお昼タイム。お弁当を食べ終わったので、将棋でもしようかな(最近仁王さんに頼まれて将棋を教えている)と思い、将棋盤やら駒やらを用意しようと立ち上がったら「ちょっと待って。座って」と仁王さんに声をかけられた。なんだろう、と思いつつとりあえず着席。すると、仁王さんがポケットから何かを取り出した。

「あげる」
「?」
「開けてみて」
「うん…」

仁王さんに渡されたのは小包。紺色の包みに金のリボンがついてある。
なんだこれ?プレゼントっぽいけど…ホントに開けても良いのかな?
ちらり、と仁王さんに視線を向けて問うと「開けてみて」ともう一度言われたので、手のひらに収まるサイズのそれを綺麗に開ける。すると、中にはストラップが入っていた。複雑に結ってある紐の先に小さめのガラス玉が付いているシンプルなデザインだ。

「可愛い…!」
「気に入った?」
「うん!…っていうか、貰っても良いの?」
「うん、誕生日のお返しじゃし」
「えっ!いや、あれはマフラー交換しただけだよ?それなのに…」
「交換してくれて嬉しかったから、えぇんじゃ」
「!」

ふにゃりと笑ってそんなことを言う仁王さんに少しドキッしながら、ストラップに視線を移す。
……可愛い。白いに近いピンクのガラス玉が女の子女の子していなくて私にはちょうど良い。…嬉しいな。

「ありがとう。嬉しい。携帯に付けるよ」
「喜んでもらえて良かったナリ」

仁王さんの見ている前で携帯にストラップを付ける。元々、携帯にはストラップが付いていなかったので、そっけない携帯に可愛いガラス玉がプラスされ思わずニヤニヤしてしまう。
しばらくストラップ眺めてから、仁王さんに視線を戻すと目があった。

「ニヤニヤしとるのぅ」
「へへへ、いやぁ、なんか嬉しくて」
「!」

私が笑いながら言うと仁王さんはビックリしたように目を見開いた後、うつ向いてしまった。
…ど、どうした。お腹でも痛いのか?え、大丈夫?

「ど、どうしたの?大丈夫?」
「…うん」
「お腹痛いの?お弁当食べたせいかな…。何か変なもの入れたっけ?」
「…いや、お腹は平気」
「じゃぁ、具合でも…」
「大丈夫じゃ。なんもない。ていうか、早く名無しちゃん将棋しよ早く」
「え、あ、うん…」

うつ向きつつ、かなり急かしてくる仁王さん。急かす声に戸惑いながら将棋盤やらの準備をするために席を立つ。
本当に大丈夫なんだろうか?ちょっと心配だ。でも本人が大丈夫だって言っているのに、何回も「大丈夫?」なんて聞くのもアレだよね。と悩みながら将棋盤の準備を進める。

その後、具合が良くなった仁王さんに将棋をレクチャーしていると、昼休み終了のチャイムが鳴ったので、部室の戸締まりをして教室に戻る。
仁王さんに良いものもらっちゃったなぁ。うーん、クリスマスの時にでも何かお礼しようかな。などと考えながら、教室のドアを開けた。

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