春うらら.

□第四十六話
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もうすぐクリスマス。登校して教室に入ると、クラスの女の子たちが彼氏にあげるプレゼントについてキャッキャッとはしゃぎながら話していた。その横を通り過ぎ、自分の席に座る。
プレゼント選ぶのって楽しいよね。…いいなぁ、ちょっと羨ましいかも。とガラにもないことを考えながら、マフラーやら手袋やらを外しているとハナちゃんが近付いてきた。

「おっはよー」
「おはよー」
「あのー……お願いがあるんだけど…」
「お願い?」

隣の幸村さんの席に座って話しかけてくるハナちゃん。席の主はおそらく朝練中なので当分教室には来ないだろう。私もハナちゃんの方に向き直り「お願いって?」と話の続きを促す。

「24日と25日にクリスマスケーキの売り子のバイトがあるんだけど、一緒にやらない?」
「売り子……そんなバイトあるんだね」
「うん。臨時バイトだから2日間だけで、時給は950円。もしケーキが売れ残ったら持って帰っても良いんだって」
「へぇー!」

ケーキ持って帰って良いとかなんて素敵なバイトなんだ。いや、まぁ、働くんだから売れ残らないように頑張らないといけないんだろうけど。…特に予定も入ってないし、ハナちゃんと一緒に働くのも楽しいかも。うん、やってみようかな。
不安げにこちらを見つめるハナちゃんに「私バイトとかしたことないけど、それでも良い?」と言うと「うん!全然大丈夫!」と返ってきた。

「ありがとー!助かったー!」
「アハハ、お役にたてるように頑張るよ」
「うん。一緒に頑張ろう!」
「ていうか、よくそんなバイト見つけたねぇ」
「あー…見つけたっていうか…」
「?」

なぜか遠い目をするハナちゃんに詳しい経緯を聞くと、バイトの話を持ってきたのはハナちゃんのお姉ちゃんで、友人と二人で売り子をやる予定だっただが、つい最近彼氏が出来た途端「クリスマスなのにバイトなんてしたくない!彼氏と過ごす!ハナ、後は頼んだ!」と言われ、渋々引き受けることにしたんだそうだ。

「へぇー。やっぱりクリスマスは彼氏と過ごしたいもんなんだね」
「そりゃそうだよ。クリスマスだよ?聖なる夜だよ?恋人たちのクリスマスだよ?」
「…う、うん。どうしたのハナちゃん」
「…………今年も彼氏出来なかったなと思ってさ………」
「あー…。ら、来年頑張ろうよ」
「そうだねぇ。…名無しちゃん彼氏は?」
「いないよ。出来たら報告するし」
「最近名無しちゃんに男の影かちらついてるっていう噂があるんだけど、そこんとこどうなの?」
「何その噂。怖いんですけど」
「まぁ、噂の内容は本当はちょっと違うんだけど」
「何それ、ほんと怖い」

ハナちゃんに詳しく話を聞こうとしたところで、幸村さんが教室に入ってきたのでお喋りを中断。
変な噂が出回ってるらしいんですよ、と幸村さんに話したら「あぁ、それね。大丈夫、何も心配することないよ」とイケメンスマイルが返ってきた。
…うん、意味わかんない。幸村さんのその笑顔で逆に不安になるんですけど…。
更に聞こうにもイケメンスマイルで「これ以上何も質問すんじゃねーよ」と圧力がすごいので、何も聞けないまま授業が始まった。
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