春うらら.

□第五十五話
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仁王さんと付き合い初めて、早いものでもう2ヶ月ほど経った。
一緒にテスト勉強したり、ホワイトデーにお返しをもらったり、春休みに練習試合見に行ったら幸村さんにニヤニヤされたりと、まぁ色々あった。最初は、お付き合いなんて初めてだから上手く出来るか色々と不安だったけど、特に今までと違った変化は無く(といっても、相変わらずドキドキはするし、仁王さんからのスキンシップに戸惑ったりはするけれど)穏やかに過ごしている。




「あっ!見て名無しちゃん!また同じクラスだよ!」
「えっ、どこ?!」
「あそこ!A組!」
「ほんとだぁ!やったぁ!」

ハナちゃんと手を取り合ってきゃっきゃっとはしゃぐ。
新学期を迎えて、恒例のクラス別けが行われている。自分のクラスを探すためにハナちゃんと二人で掲示板の前に立っていたのだが、今年はあっさりと見つけることが出来た。
それにしても、3年間ハナちゃんと同じクラスだなんて…!すっごく嬉しい…!
ニコニコ笑って「3年もよろしくね」と言うハナちゃんに「こちらこそ」と笑顔で返していると、後ろから声をかけられた。

「やぁ、名無しのさん、大岡さん」
「あ、幸村くんだ。おはよー」
「おはようございます」

幸村さんに挨拶すると「俺もA組だったんだ」と笑顔で報告された。
おぉ、幸村さんも一緒なのか。色々いじられたりしてるけど幸村さんのことは嫌いではないので、少し嬉しい。ハナちゃんと一緒に「よろしくね」「よろしくお願いします」と言っているとポンと肩を叩かれた。

「あ、丸井さん」
「よっ!俺もA組だから。シクヨロ」
「えっ!マジで!?」

マジで、とピースしてくる丸井さん。
おぉ…!なんか凄いぞ。友達が続々と同じクラスだ。なんか嬉しい。新しいクラスが楽しみなのって初めてかも。いつもクラスに馴染めるか緊張してたから。
なんて思いつつ、丸井さんと「イェーイ!」とハイタッチしていると、後ろからくぃっと服の裾を掴まれたので振り返る。

「あ、仁王さん。おはよう」
「ん」
「クラス、どうだった?」
「……」

え、なんで無言なの?どうしたんだろう。
首をかしげながら、何やらしょぼくれている仁王さんに「どうしたの」と聞くと「クラス、Bじゃった」とポツリ。

「あ、隣だね。私Aだったんだ」
「うん。知っとる」

一番最初に名無しちゃんの名前探したし。という仁王さんに少しきゅんとした。お付き合いするようになってから、よく仁王さんにきゅんとさせられてる気がする。

「え、えっと………と、隣だから体育とか一緒になるかもね」
「…………じゃ。………るい」
「え?」
「隣とか嫌じゃ。幸村とブンちゃんだけズルい」
「………」

えええぇぇぇぇ…?なんで突然乙女チック発動してんの…?ていうか、クラスのことなんてどうしようもないんですけど…。
助けて下さい、と後ろの三人に視線を向けると、丸井さんは「うわ、めんどくさ」みたいな顔、ハナちゃんはニヤニヤ、幸村さんはもの凄い悪巧みスマイルを浮かべていた。

「残念だったね仁王。でも安心しなよ、名無しのさんのことは俺がしっかり守ってあげるから」

ポンと私の肩に手を置いて、寒々しい台詞を吐く幸村さんに思わず鳥肌がたった。
守るとか……いつもイジメてくる人が何言ってるんだ。ちらりと視線を向けると「ね?名無しのさん」と威圧たっぷりに微笑まれたので、ハハハ、と乾いた笑いを浮かべる。

「きっと今回も隣同士の席だから、いつでも助けてあげるよ?」
「アハハ………それはどう」

も、と言おうとした瞬間、仁王さんにぐぃと腕を引っ張られて、そのままぎゅっと抱き締められた。
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくるものだから、もの凄く苦しい。そして恥ずかしい。人前でこういうことするのやめて下さい…!

「ちょ!仁王さ…!離し…!」
「いや」
「く、苦しいって…!」
「いや」
「ちょ、ほんとに…!」
「いや」

こ、子供か!と思わず突っ込みそうになった。
その後、どうにかこうにか仁王さんから脱出して「人前でこういうことするのは良くない」とお説教。ブーたれてる仁王さんの横で、ケラケラと笑う幸村さんを見て、3年の間中こうやってからかわれるんだろうな、と少し頭が痛くなった。

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