春うらら

□第二話
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教室に入り黒板を見ると座席表が張り出されていたので、自分の席を確認する。席順はランダムなようで、安藤の後ろが菊地だったり、岡部の前に綿貫だったり。規則性が無いので自分の名前を見つけるのに一苦労だ。私の名前は窓側の列の後ろから二番目にあった。
素晴らしい。良い席だ。窓からの陽射しが暖かいし、位置も前過ぎず、かといって一番後ろでプリントを集める苦労もない。ラッキーだなあ。
周りの席はお隣さん以外まだ来てないみたいだった。お隣さんはメガネの男の子。真面目そうな子だ。メガネ逆光してるけど。
着席して窓の外を見る。…あー、いいね。陽射し。暖かくて気持いい。と目を細めていると、空いていた前の席に女の子が座った。そして、ちょっと笑いながら振り返って話しかけてくれた。

「今、すごい気持ちよさそうな顔してたよ」
「うん、ポカポカして気持ち良くて」

ヘラヘラ笑って応えると、前の子も笑って「春の日向っていいよねー」と言ってくれた。…うん、この子良い子だ。

「だよね。日向ぼっこサイコー」
「私も好きー。でも寝ちゃいそうになるかも」

なんて、先生が来るまでお喋り。
名前は大岡 花実ちゃんというらしい。ハナちゃんと呼ぶ事になりました。

「名無しちゃんは外部受験生?」
「うん、そうだよー。よくわかったね」
「だって「おーし!みんな席につけー」」

話の途中で先生が来てしまった。ハナちゃんは「また後で」と言って前を向いた。私も先生の話を聞きながらボンヤリ考える。
この学校は、中学・高校・大学と一貫校だ。そのため付属中学からの内部受験と、別の中学からの外部受験と、入学方法が二つある。内部受験の方が試験が楽だったり、学校自体の設備・環境等が良いなどの理由から、付属中学からそのまま高校に入学する子がほとんどだそうだ(体験入学の時に聞いた)。私は家の事情でこの春から神奈川に引っ越してきたので外部受験になる。ハナちゃんはなんで一発で私が外部受験ってわかったんだろう。もしかして何か目印が制服についてて見た目でわかるとか?それは嫌だな。何かのはずみでイジメに発展したら困る。…でもハナちゃんの制服と私の制服違いなんてあったか?

「というわけで、明日から普通授業だぞ。さっき渡した時間割り通りだから忘れ物はしないように。では、解散」

考え事をしていたせいで半分ぐらい聞き逃してる気がするが、先生の話が終わって解散になった。

「名無しちゃん今日はもう帰る?」
「うん。行きたいところのクラブ見学は明日からみたいだし、今日は帰るよ。ハナちゃんは?」
「私も帰るー、一緒に帰らない?」
「うん!帰ろう!っていっても私んち学校から5分で着く距離だけど」
「近っ!羨ましー」

二人で笑いながら帰り支度をしていると、ハナちゃんが隣の逆行メガネくんに声をかけた。

「柳生くんは今日から部活?」
「ええ、そうですよ」
「さすがテニス部は練習熱心だね、頑張ってね」
「ありがとうございます。お二人とも気をつけて帰ってくださいね。それではまた明日」

逆光メガネくんは柳生くんと言うらしい。私にも挨拶してくれたので「またね」と返して手を振った。

「んじゃ、帰ろっか」
「かえろーかえろー」

促されて教室を出る。ずっと気になっていたのでハナちゃんに思いきって聞いてみた。

「ね、なんで私が外部受験生ってわかったの?」
「ん?あぁ…だって柳生くんに興味無さそうだったから」
「…………内部受験の子たちは、みんな柳生くんに興味あるの?」
「柳生くんっていうかテニス部にね」
「テニス部人気なんだ」
「うん。全国大会で優勝してて、中学の時のレギュラー陣が全員イケメン揃いだからね。レギュラー陣の何人かはファンクラブもあるみたい。ちなみに新入生代表の挨拶やってた柳くんもテニス部だよ」
「…へー…だからすごい拍手だったんだ…」

色々謎がとけてスッキリしたが、テニス部の人気っぷり(主にファンクラブの存在)に少し引きぎみになる。なんか怖くなってきた…。もうテニス部の話題はやめよう…。

そのあとは、お互い甘いもの好きということが発覚し、美味しいケーキ屋さんの話(「今度一緒に行こう」「うん!」)とか最近はまっているお菓子の話をしていると、家の前まで着いてしまった。

「あ、私んちここなんだ」
「そっか、じゃまた明日ねー」
「うん、ばいばーい」

手を振って見送る。いい友達も出来たし、楽しい学校生活になればいいな。と思いながら家に入った。

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