春うらら

□第五話
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私は今、大変機嫌が良い。なぜがというと部活(将棋部所属、部員数8名)の部内トーナメントで一位になったからだ!ふふふ、頑張った甲斐があった!
そして、一位になった景品として学校の近くにあるケーキ屋さんの「バケツプリンアラモード80%off・30分以内に完食すれば代金無料!」のペアチケットをゲットしたのだ!
ふ、ふふふふへへへへ。嬉しい。嬉しすぎる。甘いもの大好き人間にはたまらない景品だ!それに、このケーキ屋さんにはまだ行ったことがないので凄く楽しみ。

ニヤニヤしながら胸ポケットに割引券を入れて下駄箱に向かう。割引券の有効期限が今日までだったのでさっそく使うつもりだ。本当はハナちゃんも誘って二人で行くつもりだったが、部活(バレー部)の練習試合があるとかで今日は行けないと言われてしまった。他の人を誘おうにも誰も思い付かなかった(友達の少なさに愕然とした)ので一人で行くことにした。ちょっと寂しいけど使わないと損だよね!

下駄箱で靴を履き替え、上履きを拾うために前屈みになる。すると、胸ポケットから割引券が落ちてしまった。
あぶないあぶない。私のお楽しみ券が。と、屈んだまま手を伸ばすと、割引券をガン見している赤い髪の毛の人がいた。

「………(髪の毛が…赤い…だと…?…え、不良…?)」
「……コレ、お前の?」

私の割引券をしゃがんでガン見している赤髪さん。…怖い。不良かもしれん。でも、ここはきちんと言わなければ愛しのプリンが食べられない…! 

「あ、はい。私のです。すみません。失礼しました。」

よし!なぜか謝ってしまったが自分のものだという主張は出来たぞ。あとは、さっさと券を拾ってダッシュで立ち去るだけだ。そう思って割引券に手を伸ばしたが、私よりはやく赤髪さんが割引券拾ってしまった。

「え(…ちょ、とられた…)」
「これ学校の近くのケーキ屋のだろぃ?」
「あ、はい。そうですけど…(なぜそんなに嬉しそうな顔をしているんだ…)」
「バケツプリンアラモードの割引券とかいいの持ってんじゃん!」
「…はぁ、どうも………」

答えつつ、頭の中は嫌な予感でいっぱいだ。アレだ。この流れだと「この券俺によこしな」的な感じになるんだろ。………嫌だ。渡したくない。不良に逆らうのは怖いが、努力の結晶である割引券を渡すのは凄く嫌だ。てか、男の子なのにケーキ屋にテンション上がるとか甘いもの好きか?珍しい。
などと、色々脳内で考えていると、赤髪さんがキョロキョロし出した。

「…………あのー…(大丈夫かこの人)」
「…(こいつ、一人で行くっぽいな)」
「すみません。拾って頂いてありがとうございました(こう言えば返してくれるだろう)」
「お前さ、コレ一人で行くのかよ?」
「(心に500のダメージ!)……そうです。友達と予定が合わなかったので」

私が答えた途端、赤髪さんが満面の笑顔になった。
なんなんだ。ペアチケットを持っていながら一人で行くやつがそんなに面白いか。傷つく。恐喝されない代わりに心に直接ダメージ受けるんだけど。

「やっぱりな!見た感じ、ツレっぽいのが周りにいなかったからさー!」
「…(だからキョロキョロしてたのか)」
「で、相談なんだけど、コレ俺も一緒に行っていいか?」
「…………………は?」
「だから、バケツプリンアラモード一緒に食いに行ってもいいか?って聞いてんだけど」
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