春うらら

□第七話
2ページ/2ページ

「待たんかっっ!!!赤也っっ!!!」
「すんません!副部長!」
「今は副部長ではないわっ!!」

声のボリュームがでかい。周りの注目集めてるよ。などと思いながら視線を向けると、真田くんが見知らぬ男の子を怒鳴りつけりていた。
いやー…、帽子姿の真田くん初めてみた。帽子を被るとさらに老けて見える。制服を着ていなければ先生にしか見えないな。

真田くんの怒鳴り声(と老け具合)に驚いて、私とハナちゃんの歩くペースが落ちてしまった。いけないいけない。真田くんに気付かれる前に校舎へ行かないと。


「ハナちゃん。急いd「おはようございます。大岡さん、名無しのさん」」
「「…!?、や、柳生くん……」」

突然背後から声をかけられた。いつの間にか柳生くんが近づいてきていたようだ。
ヤバイ。柳生くんのメガネがいつもより逆光してる……。…これはハナちゃんを説教する気満々だな。いつも改造した制服を見て何か言いたげだったし、この機会に怒るつもりだろう…。

「また改造した制服を着てるんですね…。大岡さん、あなたは何d「名無しちゃんごめんっ!!」」

突然ハナちゃんが柳生くんの言葉を遮り、私を突き飛ばして校舎に猛ダッシュした。
遠ざかる背中を見て、ようやく状況を理解する。
え、逃げた!?私を身代わりに逃げた!?盾になるとは言ったけど、身代わりになるとは言ってない!!と、頭はハナちゃんへの苦情で埋め尽くされるが、体は突き飛ばされた反動で倒れていく。転ぶかと思ったものの、一歩手前で柳生くんが受け止めてくれた。
私が障害物となったため柳生くんも「待ちなさい!大岡さん!」と声を上げただけで、追いかけることが出来なかったようで、ハナちゃんは無事(?)服装検査を通り抜けていった。


「…………(…ジュースじゃなくてラーメン奢らせてやる!)」
「名無しのさん、大丈夫ですか?」
「え?…ああ!大丈夫ありがとう!ごめん!」
「いえ、ケガがなくて良かったです。…それにしても大岡さんには困ったものですね…」

突き飛ばされた驚きと身代わりにされた怒りでフリーズしていたが、慌てて支えてもらったお礼を言い、倒れ込むような体制だったので身を起こすと、柳生くんは溜め息をついていた。

「あーー!!柳生先輩が女と抱き合ってるっすよ!副部長!!」
「なに!?…柳生と…名無しのではないか!!公共の場で何をしている!!離れんか!!」

 や め て く れ !
一難去ってまた一難。突き飛ばされた次はあらぬ誤解をかけられてしまった。

「切原くん、違います!彼女が転びそうだったので支えていただけです!」
「え〜〜?本当っすか〜?」
「真田くん!違います!支えてもらっただけなんです!」
「む、そうだったのか。だが、何もないところで転ぶなど、たるんどる!」
「「いやだから、違うんです!!」」

柳生くんと否定し続けたが、なかなか信じてもらえず大変だった。最終的には予鈴が鳴ったので解放されたが、私はなぜか真田くんに説教され、柳生くんは男の子に疑われっぱなしだった。
くそぅ、なぜこんなめに…。というか、あの男の子は真田くんの説教から逃れるために、こっちに矛先を向けたと思う。だって、去り際に「今日は殴られなかったぜ、ラッキー」的なのことを言っていた。


疲れ果てた私と柳生くんだったが、教室でハナちゃんを見つけた瞬間、ダッシュで駆け寄り二人揃って怒りをぶちまけた。鬼の形相だったと思う。
柳生くんは相当ボルテージが上がっていたので、休み時間や昼休み、放課後までお説教していた。
ハナちゃんが半泣きになりながら「本当にすみませんでした!もう人を身代わりにして逃げようとしません!大人しく検査にひっかかります!…なのでもう許して下さい」と謝ったところでようやく許すことにしたようだった。
私はというと、教室で怒りをぶちまけた時にラーメンを奢ってもらう約束を取り付けたのでそれで許すことにした。

ラーメン楽しみだなあと思いながら、柳生くんに土下座する勢いで頭を下げているハナちゃんを置いて、一足先に帰宅した。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ