春うらら

□第九話
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えええぇぇ…!?お腹空いてたの…!?なら、こんなとこで油売ってないで、さっさとご飯食べに行けば良いのに。と、ビックリしつつプリピヨ星人を見る。
プリピヨ星人は、特に恥ずかしがる様子もなくお腹を撫でていた。

「………(そういえば、丸一日何も食っとらんな)………」
「…………」
「………(あいつのおにぎり美味そうじゃの)………」

プリピヨ星人がおにぎりを見つめてくる。
これは完全におにぎりを狙っているよね、彼。プリとかピヨとか言ったかと思えば、次は無言でおにぎりを狙ってくるとか、とんでもないな。新手のかつあげだろうか。

「ピヨ」
「…………………」
「プリ、」
「…………………」
「ピヨ」
「…………………」

妙な言葉を連発してくる。
完全におにぎりの催促ですね。わかります。鳴いて催促とか雛鳥みたいだな。だんだんイライラしてきたぞ。

「……あの」
「プリ、」
「お腹空いてるんだったら、購買に行ってみたらどうですか?」

よし。遠回しに「おにぎりは渡さない」と言ってやった。これで諦めてくれると良いけど、どうだろうか。

「……おにぎりが食べたいナリ」
「……………」

えええぇぇ…なにこの人…!おにぎりが食べたいと宣言したうえに、語尾に『ナリ』だと…!?色々とひどいな。イケメンだからって『ナリ』はひどいと思う。

私のおにぎりを見つめ続けるプリピヨ星人。ビックリする私。なんだかもう疲れた…。プリピヨ星人におにぎりを渡して、早く立ち去ってもうおう。大好きな炊き込みご飯のおにぎりだったけど、仕方ない。
ため息をつきつつ、おにぎりを二つ、プリピヨ星人に差し出した。

「………どうぞ」
「ピヨ」

鳴き声を出しながら受け取っていた。いや、うん。いいけどね。…ありがとうとかないのか君は。
またイラッとしつつ、自分のおにぎり(最後の一つ)を食べ、卵焼きも食べる。
すると、プリピヨ星人が近付いてきた。

「………まだ何か?」
「…卵焼きも美味そうナリ」

…誰か助けてください。お弁当をかつあげされそうです。美味そうと言われて悪い気はしないが、私の食べるものが無くなるのは困る。
口元がひきつるのを我慢しつつ、プリピヨ星人に言う。

「あの…、かつあげですか?」
「?」
「おにぎりの次は、おかずとか…私が食べるものが無くな……あ!ちょっと!」

私がぶつくさ言っている間に、プリピヨ星人はベンチに座り、おにぎりを食べ、指でおかずを摘まみ始めた。
……………………。もういい。何を言っても無駄だな。人生諦めが肝心だ。

それからは、プリピヨ星人と並んでお弁当を食べた。
プリピヨ星人はたまに「唐揚げが美味い」だの「アスパラは嫌い」だの、独り言なのか、文句なのか良くわからない発言をし、私はそれに「はぁ」とか「好き嫌いは良くない」と返した。
食べ終わるとプリピヨ星人は、「ごちそうさん。美味かったナリ」と言い、去っていった。

一体なんだったのか…。疲れた私は、もう二度と彼に捕まらないようにしようと思いつつ、教室に戻った。
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