春うらら

□第十話
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ただいま体育祭の真っ最中。体育祭の花形であるリレーが行われているので、クラスの子たちと一緒に声援を送っている。

「佐竹ー!いけー!」
「逃げ切ったら一位だぞー!」
「佐竹くん、頑張ってー!」

一年生クラス対抗リレーで、1-Eのアンカー佐竹くんが一位を独走している。佐竹くんにバトンが渡るまでドベだったのに全部抜き去ってしまったのだ。ほんとすごい。足速すぎ。普段のんびりしている佐竹くんと同一人物だと思えないぐらいだ。

無事、一位でゴールした佐竹くんが『1』と書かれた旗を持って、ゆっくり歩いて応援席に戻ってくる。なんかかっこいい。どことなく王者っぽい雰囲気だ。

「凄い!佐竹くんすごい!一位じゃん!」
「うん。とれた」
「とれたって…もっと喜べよ!」
「喜んでる」
「まぁまぁ、いいじゃん!佐竹!よくやった!」
「うん」

クラスの子たちに揉みくちゃにされる佐竹くん。私も「凄かったよ」と声をかける。ハナちゃんは佐竹くんの頭を撫でくり回していた。


「次はクラブ対抗リレーだね」
「うん、ハナちゃんは出ないの?」
「私より足の早い先輩方が出場するから私の出る幕無し」
「あはは、それは残念だね」
「その代わり、先輩の為に力の限り応援するんだー」

なんて、おしゃべりしながら次のクラブ対抗リレーの応援にそなえて見えやすい位置に移動する。
クラブ対抗リレーとは、運動部は強制参加、文化部は自由参加の男女別の対抗リレーだ。ちなみに将棋部は自由参加の権限を生かし辞退しているので出場しない。

「ただいまよりクラブ対抗リレーを行います。出場者はゲートにお集まり下さい」

アナウンスが流れて選手が続々とコース内に並ぶ。まずは、女子部のリレーからスタートするようだ。
やっぱり陸上部が有利なんだろうか、と思っていたがバスケ部の女の子たちが凄くて独走状態だった。ハナちゃんが所属のバレー部は8クラブ中6位だった。非常に悔しがっていた(「あんなに応援したのに悔しい!来年頑張る!」)。

女子運動部が全員捌け、男子運動部の順番になる。するとなんだか周りに女の子たちが集まってきた。しかもみんな口々に「テニス部誰が出るのかなあ」「やっぱりレギュラーは出るよね」「ちょー楽しみ」とかなんとか言って非常に楽しみにしているようだ。

さすがファンクラブが存在するというテニス部。女子の人気が半端じゃないな。テニス部の人は柳生くんと柳さんぐらいしか知らないが、確かに二人とも顔面偏差値が高い。イケメンだよね。
などと考えていると、リレーの選手がコースに並び始めた。一番手のところに柳生くんが並んでいるのが見える。
特に応援したいクラブもないし、柳生くんを応援しようかな。そう思いスタートを待つ。

「位置について、よーい……パン!」

全員、空砲の音と共にスタートを切る。少しだけ柳生くんが他の人より速い。

「「柳生くん!頑張ってー!」」

ハナちゃんと一緒に声を出す。
走ってる時もメガネが逆光してる、さすがだ。

他の人たちと二歩ぐらい差を作り、丸井さんにバトンを渡す柳生くん。
………………え?丸井さん?……………え?!丸井さんテニス部だったの?!
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