春うらら

□第十二話
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文化祭が終わって数日が経った。お祭りムードもすっかりなくなり普通の学校生活に戻っている。もう少ししたら期末テスト。それが終われば冬休み。だんだん寒くなってきたし、そろそろカーディガンが必要だなあ、と思いつつ学校に向かう。


お昼休み、ハナちゃんと教室でおしゃべりしていると担任の先生が近寄ってきた。

「名無しのー、今日の日直お前と柳生だったよな?」
「はい、そうですけど…」
「そうか。悪いんだが次の授業で使うから、社会科資料室から地図と横に置いてある資料持ってきてくれないか?」
「…わかりました」
「結構重いから柳生も連れて行けよー」
「はーい」

日直の仕事を言いつけられてしまった。面倒くさい。なぜ、今日に限って用事を言い付けるんだと、小さく溜め息を付きながら立ち上がる。そして、ハナちゃんに一言謝って教室を出た(ハナちゃんは「頑張って〜」と手を振って見送ってくれた)。

柳生くんどこにいるんだろう。教室にはいなかったしなあ、と思いながら社会科資料室へ歩いていると、柳生くんの後ろ姿を見つけた。良かった、案外早く見つかって探す手間が省けた。
声をかけようとしたが、誰かと話しているようだ。
話の邪魔をしても良いのだろうか、ちょっと待った方が良いかな、と柳生くんに気付かれない程度に離れたところで考える。んー、どうしたものかと思っていると柳生くんと話をしている人と目が合った。
……………………あれは…プリピヨ星人…!なぜ奴が…。柳生くんと友達なのか?…いや、何か理由があって話しているだけで友達ではないのかもしれない…。あああ、どうしよう。プリピヨ星人にはなるべく関わりたくない。またいつお弁当を奪われるか…!と頭の中で考えながら、視線をそっと反らす。
………一人で資料運んだ方が平和だよね。うん、そうしよう。多少しんどいけど二往復ぐらいすれば一人でも運べるはずだ。よし、そうしよう。と踵を返したその時。

「ピヨ」
「………(ビクッ!)…」
「?どうしたんですか仁王くん………おや、名無しのさん」
「…………や、柳生くん………」

最悪だ。立ち去るつもりだったのに声をかけられてしまった。引き返そうとしていた体を元に戻し、ひきつった笑顔で柳生くんに声をかける。

「あ、あの……次の授業で使う資料を日直が運ぶように先生に言われて……」
「あぁ、それはすみません。わざわざ探してくれたのですか」
「ううん、資料室に行くときに丁度見かけたから」
「そうですか……………どうしたんですか仁王くん」

私と柳生くんが話しているのをガン見してくるプリピヨ星人(仁王くんと言う名前らしいがプリピヨ星人で十分だ)。……こえー!ちょー見てくる…!なぜだ…!柳生くんも不審がってるレベルだよ。

「プリ、」
「……ハァ。すみません名無しのさん。彼は仁王くんと言いまして、私のテニスのダブルスパートナーなんです。変な人ですが悪い人でないんですよ」
「………へぇー………」

溜め息をつきながら、柳生くんがプリピヨ星人を紹介してくれた。
こんなキャラクターの違う二人が組んで上手くいくんだろうか…。とても疑問だが、まぁいい。上手くいっているんだろう。こんな変な人とパートナーなんて柳生くんも大変だな。

「では仁王くん。用事が出来たのでもう行きます。…行きましょう名無しのさん」
「え、いいの?」
「ええ。もう話は終わっていましたので」
「そうなんだ…」

柳生くんと並んでその場を離れる。ちら、とプリピヨ星人を見るとまだガン見していた。
…こわ。なんだ。一度避けようとしたことが良くなかったのだろうか。慌てて目を反らす。
後ろからバシバシ視線を感じる。怖い。

若干ビクビクしつつ、もう二度と会うことが無いよう祈りながら、早足ぎみに柳生くんと社会科資料室に向かった。

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