春うらら

□第十三話
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「ぃらっしゃーせー!空いてるお席にどうぞー」

元気な店員さんだ。声が素晴らしい。会釈をしながら、テーブルの席に座る。

「あー、何食おっかなー」
「私、醤油ラーメンとチャーハンで」
「チャーハンも美味いの?」
「はい!パラパラご飯が卵と絡み合ってて美味しかったです」
「んじゃ、俺もそれで!」

もうすぐラーメンが食べられる喜びのせいか笑顔満点の丸井さんがお水を持ってきてくれた店員さんに注文していた。
あー、ここのラーメン食べるの久しぶり。楽しみだなあ。と思いながら丸井さんとおしゃべりしてラーメンを待つ。5分もしないうちにラーメンが来た。

「おまたせしました!醤油ラーメンです」
「よっしゃぁ!いただきまーす」

元気良く食べ始める丸井さん。幸せそうだな。
私も手を合わせてから食べる。…うん、やっぱり美味しい…!
そのあとすぐチャーハンも来て、ズルズル、パクパクと会話もせずに食べ進めた。

ある程度食べ終えて残りのスープを飲んでいると、突然丸井さんが話始めた。

「名無しの」
「?」
「あのさ」
「はい」
「お前、柳と仁王と何かあったりした?」
「……ブッ…!…ゴホゴホッ…!」
「うわ、きったね!」

柳さんとプリピヨ星人。私の苦手な二人の名前を突然言われて、飲んでいたスープを吹き出し、むせてしまった。慌ててのけ反る丸井さん。…ひどいな、そんな飛んでないし。
呼吸を整えて返事をする。

「な、なんでですか?」
「いや、文化祭ぐらいの時に柳から名無しののこと聞かれて、そのあとちょっとしてから仁王にも聞かれたから何かあったのかと思って」
「………へぇー………」

怖い。なぜ二人は私のことを丸井さんに聞いたりしたんだ。いや、柳さんならまだわかる。自分のことを良く思っていない人間の動向とか気にしそうなタイプっぽいし。ただプリピヨ星人がわからない。彼には何もしていないはずだ。おもっいっきり避けようとしたけど。それが良くなかったのだろうか。

「柳は他人のデータをとるのが好きなやつだから良いんだけど、仁王が他人に興味持つのは珍しくてさ」
「……はぁ」
「で、お前何かした?」

聞いてきた割には興味なさげな丸井さん。特に内緒にすることもないので全部話した。
柳さんは親切にしてくれたがなんとなく苦手なこと、それを本人に気付かれてしまったこと。プリピヨ星人は、前に一度お弁当を半分ぐらい奪われたこと。
すると丸井さんはプリピヨ星人のお弁当話に食い付いてきた。

「仁王が食べたのか?」
「え、はい」
「自分から進んで?」
「はい。私が自分のお弁当を人にあげるわけないです」
「そうだな。お前食い意地はってるもんな」
「丸井さんには言われたくないです」

私の言葉に丸井さんはお互い様だな、と言ってそのあとはずっと、へぇー仁王がねぇーへぇー、としきりに感心していた。なんなんだ。彼がご飯を食べたことがそんなに珍しいのか。人間なんだから食事は当然のことだろう。

そのあとは特に何かを聞かれることもなく、追加注文したデザート(杏仁豆腐)を食べて帰ることにした。ラーメン屋さんの前で丸井さんとは別れて(「じゃーなー」「ばいばーい」)家に帰る。

ガッツリ食べたし今日は晩御飯抜いた方が良いかな。でも、好きな食べ物だったらどうしようと考えながら家に入った。
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