春うらら

□第十七話
1ページ/2ページ

ジングルベール♪
ジングルベール♪
鈴がーなるー♪

商店街をハナちゃんと歩いていると、あちこちからクリスマスソングが聞こえてきた。どこもかしこも楽しそうだな。イルミネーションはピカピカしてるし、クリスマスツリーの写真をカップルがキャッキャッしながら撮っていた。サンタのコスプレした店員さんが「ケーキいりませんか」と道行く人に声をかけているし、子供はお母さんに手をひかれてキャッキャッとはしゃいでいる。今日はクリスマスイブだし、はしゃぐのも仕方ないよね。と思っていると突然「ううっ…」とハナちゃんが泣き始めた。

「バレバレのうそ泣きしてどうしたの」
「バレバレでいいの。悲しいアピールが出来れば」
「え、悲しいの?」
「うん…だんだん悲しくなってきた」
「なんで?」
「なんでって……クリスマスイブなのに彼氏もいない、好きな人すらいない自分が虚しくて…」
「……ハナちゃん……」
「やめて…余計悲しくなる」

ハナちゃんを慰めるつもりで肩に手を置いたのだが逆効果だったらしい。アハハ、と笑って手を離す。
ハナちゃんもそんなことで悲しくなるとか乙女だな。可愛らしい。自分のことを棚にあげてそんな風に思っていると携帯が鳴った。

「はいもしもし」
「あ、名無しちゃん今どこにいるのー?」
「今ちょうど商店街抜けたとこだよー」
「あ、じゃぁもうすぐ着くね!みんな待ってきてるから急いで来てねー」
「うわ、ごめん!」

携帯を切ってハナちゃんに「駆け足気味でいこう」と言い、歩くスピードを上げる。

今日はクラスの独り身たちを集めてクリスマスパーティーをするのだ。題して「カップルなんてクソ食らえ!独り身最高ワッショイワッショイパーティー」だ。ネーミングセンスの無さに愕然とした。ちなみにこのパーティーのタイトルを聞いたクラスの彼氏彼女持ちの方々は一様に鼻で笑っていた。そりゃそうだろう。タイトルからすでに負け犬の遠吠え臭が半端ない。

集合場所に着くと、全員集まっていたようだった。みんなに「ごめんね」と謝りながら予約してあるカラオケに向かった。
パーティールームに通されて、飲み物と食べ物の注文をし、全員で乾杯。それからドンチャン騒ぎが始まった。カラオケしたり、プレゼントを交換しあったり、おしゃべりしたり。
いやー、楽しい。みんな弾けきっている。宇宙戦艦ヤ〇トとかヤッター〇ンをみんなで熱唱したり、交換しあったプレゼントはトイレットペーパーとかマヨネーズだったりとか、一部始終ふざけていた。このクラス最高だな。アホなノリが良い。ハナちゃんもパーティーに来る前は「悲しい」とか言ってた割には、ずいぶんと楽しそうだ。今だって安藤くんと岡部くんのポッキーゲームを見て手を叩いて笑っている。

なんだかんだ楽しんでいると携帯が鳴りだした。誰だろうと思いながら携帯を開くと仁王さんからメールが届いていた。

『まーくんが部活頑張ってるのに一人だけクリスマスパーティーとかずるい(´;ω;`)』

なぜ私が今クリスマスパーティーに来ていると知っているんだ…………あ、柳生くんが言ったのかな。柳生くんもクリスマスパーティーに誘ったのだか断られてしまっていたのだ(「部活がありますので………すみません、また誘ってください」)。テニス部の人はクリスマスとか無いんだ、大変だなあ。と思いながら仁王さんにぽちぽちと返信を打つ。

『クリスマスパーティー楽しいです。仁王さんはクリスマスらしいことしないんですか?』

こんなんで良いかな。よし、送信。すると三分もしないうちに返信がきた。部活終わって暇なのだろうか。大体仁王さんが暇なときは返信が三分以内なんだよな。と思いながらメールを見る。

『クリスマスらしいことなんか、なんもせんもん(´;ω;`)名無しちゃんばっかりずるい(´;ω;`)』

ずるいって……私何にもしてないんですけど…。まぁ、他人が何か楽しんでたら羨ましくなるもんだよね。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ