春うらら

□第十八話
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クリスマス・大晦日・お正月。冬の三大イベントが終わってすぐに冬休みも終わってしまい、新学期が始まった。あっという間の冬休みだったな。夏休みぐらい長かったら良いのに。などと思いながら登校していると、肩をポンと叩かれた。

「よ!」
「あ、丸井さん。おはようございます」
「おー。あけおめことよろ」
「アハハことよろー」
「てか、お前あけおめメール手抜きすぎだろぃ」
「シンプルイズベストですよ」

丸井さんと新年の挨拶をしながら並んで歩く。
ハナちゃんや丸井さん、仁王さんなど去年お世話になった人にあけおめメールを送って、送った人達からもメールを貰ったのだが、みんなメールが派手だった(仁王さん除く)。デコメでキラキラピカピカしてた。ハナちゃんとか女の子たちはみんな可愛いらしいメールだったなあ。

「そういや、名無しのがメールでデコメ使ってんの見たことないな」
「可愛いとは思うんですけどねー。使う気にはならないんですよ」
「ほんとお前女子力ねぇーな」
「……まぁ、女子力無いのは自覚してますけど」
「え」
「えって」
「……お前自覚してんのか」

失礼な。してますよ。腹が立ったので二の腕にグーパンチをお見舞いしといた。
いてー、とか言いながら全然痛くなさそうに笑う丸井さんを見て思う。………ほんと女顔だな。顔は可愛いし、デコメは使うし、私より女子力高いんじゃないだろうか…………………ダメだ…悲しくなってきた。考えるのやめよう。
悲しい考えを振り払うようにため息をつき、前を見ると、ダルそうに歩く仁王さんの後ろ姿がみえた。丸井さんも気がついたようで駆け寄って声をかけている。

「はよ、仁王」
「おー、ブンちゃんに名無しちゃん。あけおめー」
「明けましておめでとうございます」
「あけおめー。ことよろー。今日、仁王は休むと思ってたのによく来たな」
「寒いしサボろうと思ったんじゃが、今日サボったら真田が『新年早々たるんどる!』ってうるさそうじゃから来た」
「あー。なるほど………名無しのどうした」

ビックリし過ぎて軽く固まっていると、丸井さんに心配されてしまった。
いや、だって、仁王さんモノマネ上手すぎるでしょ…!?さっきの真田くんのモノマネそっくりだった。似すぎてて本人が乗り移ったのかと思うレベル。
若干興奮しながら口を開く。

「あまりに仁王さんが真田くんに似ていたのでビックリしてました。すごいですね!」
「あー、こいつモノマネ上手いんだよ」
「ブンちゃんその言い方はやめてほしいナリ」

へー。仁王さんの意外な特技発見。すごいな。他の人のモノマネも出来るんだろうかと、仁王さんを見つめているとため息をつかれてしまった。

「名無しちゃん…。他の人のモノマネも出来るのかなとか思っとるじゃろ」
「アハハ。……ばれた?」
「バレバレじゃ」
「ね、もう一回真田くんやって。今度は違うセリフで………………丸井さん?」

仁王さんにモノマネをやってくれるように頼んでいると、なぜか丸井さんが固まっていた。どうしたんだろう。と思いつつ声をかけると、横でニヤリと仁王さんが笑った。うわ、悪人顔。

「え、なにお前ら」
「え、何がですか?」
「……お…………だ…?」
「は?」

何を言われたか聞こえなかったので丸井さんを見つめると、うつ向きつつプルプルと震え出した。
どうしたんだろう。変な丸井さんだなと、頭をかしげる。すると丸井さんが詰め寄ってきた。

「名無しの!」
「うわっ、はい!」
「お前なんで仁王にはタメ口で俺には敬語なんだよ!」
「……えー………」

そんなことかよ。と全力で思ったが邪険にするわけにもいかず、タメ口になった経緯を説明すると今度は「俺ともタメ口にしろぃ!」と駄々をこねだした。
えー……。なんなのこの人。子供か。仁王さんはさっきから肩揺らして笑ってるし。笑ってないで助けてください。
私が中々返事をしないでいると、丸井さんが肩をつかみガタガタ揺らしてきた(「おい、聞いてんのかよ?」)。なぜそこまでこだわるのかわからない。敬語の方が話しやすいだけで特に意味なんてないのに。丸井さんも乙女チックだな。

「ちょ、タメ口にするんで離して下さい」
「うわ、めっちゃ嫌そうな顔!失礼なやつだな!」
「丸井さんにだけは言われたくない」

なんやかんやと言い合いながら、結局丸井さんともタメ口で話すことになった。
丸井さんの剣幕にげんなりしていると仁王さんが声をかけてきた。

「おつかれさん」
「…仁王さんにも責任あると思うよ…」
「プリ、」

くそぅ、全然悪いと思っていないな。仁王さんが「タメ口で〜」とか言わなかったら丸井さんに詰め寄られることもなかったのに。

本日二度目のため息をつき、頭を切り替えて二人と喋りながら(「あそこの神社の出店の甘栗すっげー美味かった」「あ、私も食べました!」「………二人とも食べてばっかりだと太るぜよ」「「うるさい」」)校門をくぐった。

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