春うらら

□第二十二話
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1年生最後のテストを終えて、るんるん気分で廊下を歩く。
テストから解放された時の解放感って、なんて素晴らしいんだろうか。もう数学の難しい問題解いたり、科学の変な記号覚えたり、英語の長文訳したりしないで良いのだ…!テストの結果発表は怖いけど力は出しきったし、悔いはない。留年はしないだろうから結果発表まで自分の好きなことしよう。
とりあえずいっぱい寝たいし、対戦将棋したいし、ケーキ食べたいし、読みたい本もあるし…。と頭の中で、やりたいことをつらつらと上げていると部室に着いた。誰かいるかなと思いつつ、ドアを開ける。

「おはようございまーす」
「おー」
「おはよーん」
「テストどうだったー?」
「手応えはなかったですけど、やりきりました!で、さっそくなんですけど、誰か対戦将棋して頂けないですか?」
「いいよー。私とやろう」
「ありがとうございまーす」

やった!これでやりたいこと一つ達成だ。と思いながら先輩と将棋盤を挟んで向かい合った。


「…ま…負けました…」
「やったー!」
「うー…悔しいです…」
「アハハそれを糧に次頑張れー」
「はーい…」

向かい合って数十分。あっさりと先輩に完敗してしまった。
あー…悔しい。あそこで凡ミスしなければ…………いや、あの時ああすれば良かったのか?と机に頭をつけながらぐるぐる考えていると、先輩がニヤリと笑いながら声をかけてきた。

「えー、それでは負けた名無しちゃんにはパシリになってもらおうと思いまーす」
「えー!」
「この書類を生徒会まで届けてね。んじゃ、よろしくー」
「……………はーい」

ヒラヒラ手を振る先輩に見送られ部室を出る。
くそぅ、先輩め…。パシリにされるってわかっていればもう少し頑張ったのに…いや、頑張っても負けてたかもしれないか…。
心の中でため息をつきつつ、書類を持って生徒会室へ向かった。



生徒会室に着き、ドアをノックする。若干緊張しながら返事を待っていると部屋の中からではなく、後ろから声をかけられた。

「名無しのか?」
「え、………や、柳さん…」

な、なぜ柳さんが…。あ…そういえば生徒会役員だったっけ。役員選挙の時立候補してたな。と、思っていると柳さんが口を開いた。

「…生徒会に何か用か?」
「あ、はい。将棋部から書類を持ってきました」
「………あぁ、来年度の活動表だな。ありがとう」
「いえ」

柳さんに書類を手渡す。よし、これで任務完了だ。
会釈して立ち去ろうとすると柳さんに声をかけられた。

「名無しの」
「?」
「部長に渡してほしいものがあるんだが…部室に戻るなら持っていってくれないか?」
「あ、はい。良いですよ」
「すまない。すぐに準備するから中に入って待っていてくれ」
「え……入って良いんですか?」
「あぁ、かまわない」
「…じゃぁ、失礼します」

生徒会室に入るなんてちょっとドキドキするな。と思いながら柳さんに促されるようにして部屋へ入った。
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