春うらら

□第二十五話
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桜が満開になりつつある4月。無事二年生に進級することが出来た。
ハナちゃんと一緒に、新しいクラスが書かれてある掲示板の前で自分の名前を探しているのだが、デッカイ掲示板にデッカイ紙が貼られ、A〜Iまでクラス別けされた名簿の中から自分の名前を探すのだから時間がかかって仕方ない。ハナちゃんと協力して探しているが中々みつからない。
もう生徒が自分の名前を探すシステムやめた方が良いんじゃないだろうか。掲示板の前は混雑するし、みんな中々見付けられなかったり、見付けたもののクラスの事で友達とワーキャー言ったりするから、もの凄い人だかりが出来てしまっている。いっそのこと全員に郵便とかで事前に「あなたは〇クラスの〇番ですよ」って知らせた方が良いと思うんだけど。と、心の中でぶつぶつ文句を言っていると、ハナちゃんが声を上げた。

「あっ、あった!名無しちゃんの名前もあるよ!」
「え、どこ?」
「Fんとこ」
「あ、本当だ〜!ハナちゃんと一緒で良かったあ!」
「えへへへ。今年もよろしくー!」

顔を合わせてにっこり笑う。
いやー、本当に良かった。クラスが離れたってハナちゃんとは友達だけど、一緒のクラスになれるに越したことはない。良かった良かったとホクホクしながら人だかりから抜け出して、始業式に出席するため体育館に向かった。



始業式が終わり、教室に向かう途中でハナちゃんが部活の先輩に捕まった。どうやら今日から新入部員獲得のために何かするらしい。先に教室に行ってて、と言われたので一人で歩き出す。
人気のありそうなバレー部ですら部員獲得の為に何かするんだなあ。何もしなくて大丈夫なんだろうか将棋部は。と思いながら鞄を漁る。今朝コンビニで新発売の飴(口の中でシュワッとするソーダ味)を買ったのだ。ガサゴソと鞄の中から目的のもの探し出す。
ニヤニヤ笑いながら袋を開けて、いざ食べようとしていると、向かいから歩いてきた人にぶつかってしまった。そこそこの勢いでぶつかったので少しよろける。なんとか踏ん張って、ぶつかった人に謝ろうと向き直ると、廊下にバラバラと散らばったソーダ味の飴が目に入った。
………うわあ…。やってしまった…。やっぱり廊下で食べるんじゃなかった………。……いや、そんなことより早く謝らねば。と、視線を上げるとモジャモジャ頭の男の子が立っていた。イケメンだが頭がモジャモジャなのが残念だな。それにどこが見たことあるなあ。と思いつつ声をかける。

「すみません、大丈夫ですか?」
「えっ!?あ、大丈夫ッス!こっちこそすんません!」

お互いに散らばった飴を見て呆然としてしまったが、私が声をかけると彼も同じように謝ってくれた。それどころか散らばった飴を拾ってくれている。

「ああぁぁ、すみません!ご迷惑おかけして……」
「全然大丈夫ッスよ!」

なんて良い人だ。ありがとうございます、とお礼を言いつつ自分も飴を集める。
目につく範囲の飴をすべて集め終えて、改めてお礼を言う。

「ありがとうございました。助かりました」
「いや、俺の方こそケータイ見ててよそ見してたんで…。すみませんでした」
「いやいやいやいや。お互い様ですよ」
「ケガしなくて良かったッス!ケガしてたら俺が仁王先輩に怒られてたッスよー」

……ん?なぜここで仁王さん?しかもなんで怒るのかもわからない。
アハハと笑っているモジャモジャくんにどういう意味か尋ねる。

「えっと………なんで仁王さん?」
「え、仁王先輩の彼女さんじゃないんスか?」
「…………………え?」
「え?」

私が?仁王さんの彼女?………なぜそんな勘違いをされているんだ。とりあえずモジャモジャくんに否定しておく。

「違います。彼女じゃないです」
「え、マジッスか?」
「はい」
「あれ?……あ、じゃぁ元カノさんッスね!」
「…………それも違います。ただの友人です」
「あれ〜?丸井先輩に聞いたんスけどねー」

丸井さん…!なに変な噂流してんだ…!と怒りが込み上げるがグッと堪えて「丸井さん何て言ってたんですか?」とモジャモジャくんに聞いてみる。

「この前、先輩と仁王先輩が歩いてるのを見かけたんで、丸井先輩に電話して聞いたら『付き合ってんだよ』って言われたんスけど…」
「…………………あんのアホ………余計なことを………」
「え」
「あ、いえ。何でもないです」

あぶないあぶない。モジャモジャくんに暴言を聞かれるところだった。適当に誤魔化しながら、この前仁王さんと一緒に帰った時のことを思い出す。
丸井さんと仁王さんと私の3人でいちご大福を食べた日の帰り、仁王さんが「送る」と言ってくれたので好意に甘えたんだったっけ。その時に見られたのか。いや、見られたのは別に良いんだけど、問題は丸井さんだ。ほんとあの人余計な事しかしないな。今度会ったら文句言ってやる。 と考えながらモジャモジャくんに「仁王さんとは友達です。たぶん丸井さんがからかって言ってるだけだと思います」というと割りとすんなり納得してくれた。
丸井さんって日頃から色んな人をからかっているんだろうな。と思いながらモジャモジャくんにもう一度お礼を言って別れる。

ふぅ。とため息を付きながら、仁王さんと丸井さんはモジャモジャくんと何繋がりなんだろう。あ、テニス部?などと考えながら教室に向かった。

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