春うらら

□第二十六話
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モジャモジャくんと別れてしばらく歩くと教室に着いた。中に入って黒板を見ると去年と同じように座席表が張り出されていたので自分の席を確認する。席の並びも去年と同じでランダムなようだ。斎藤の前が安田だったり、滝井の後ろが恵田だったり。ランダムで席を並べるのが立海の決まりなのだろうか?と思いつつ自分の席につく。
今回は窓側から二列目の一番後ろの席だった。プリントを集めたりしないといけないし、微妙な席だな。まぁ、一番前よりは良いか。前の席はチョークの粉が飛んでくるから嫌なんだよね。と考えながらボンヤリしていると廊下側の隣の席に誰かが座ったので、ちらりっと横を見る。

「………………」
「………………?」
「……あ、すみません。失礼しました」

隣の人に不思議そうな顔をされたので謝ってから前を向く。
………ビックリした。だってイケメン王子が横に座っていたんだもの。イケメン王子と同じクラスだったのか。しかも横の席って……………私大丈夫?横の席だからってファンクラブの人に妬まれたりしない?………なんか不安になってきた…誰か席変わってくれ…。と思っているとイケメン王子に声をかけられた。

「ねえ」
「…え、あ、はい。なんでしょう」

ビクビクしながら返事をする。いや、別にイケメン王子が怖いわけじゃないけど。なぜかビクビクしてしまう。

「違っていたらごめんね。君、名無しの 名無しさん?」
「………はい。そうですけど……………」
「あぁ、良かった。座席表に名字しか書いてないから不安だったんだ」
「はぁ……」
「俺は幸村 精市。よろしく」
「あ、こちらこそ」

名前を言い当てられて戸惑っているとイケメン王子が自己紹介をしてくれた。「知っています」とは言えずとりあえず頭を軽く下げておく。
それにしてもなんで名前知ってるんだろう。イケメン王子も柳さんみたいに全校生徒の名前とか覚えてるんだろうか。

「蓮二から聞いたんだけど、名無しのさんって仁王と仲が良いんだってね」
「はぁ、まぁ、そうですね」
「あの……こんなこと名無しのさんに頼むのは間違っているとは思うんだけど…」
「?」

何やら神妙な顔をする幸村さん。頼み事とか面倒だなと思いつつ、とりあえず話を聞いてみると、どうやら仁王さんの偏食についてのことらしい。

「偏食のあまり部活にも影響がでてきていて困ってるんだ(「腹が減って動けん」と言って練習をサボったり、日射しに負けて直ぐバテてしまったり)。何とかしたいんだけど、僕や蓮二がいくら言っても飄々として言うことを聞かなくてね…。このままだと全国大会三連覇の夢がなんちゃらかんちゃら〜」

後半の話はちゃんと聞いてないので覚えてないが(だって全国大会がどうとか言われてもよくわからない)部活に影響が出るほどご飯を食べないのはヒドイ。てか、部活に影響が出るってことは普通に生活してても支障あるよね。
まぁ、偏食がヤバイくて困ってることはわかったけど私はどうすれば良いのだろうか。一々仁王さんの食生活なんて管理出来ないよ。と思いつつ口を開く。

「部活にも影響出てるのはヒドイですね」
「うん…。それでね、名無しのさんから仁王にキチンと食事をとるように言ってもらえないかな?」
「……それは良いですけど、私が言ったところで変わらないと思いますよ」
「それでも良いんだ。だからお願い出来ないかい?」
「え、良いんですか?」
「もしかしら変わるかもしれないからね」
「はぁ、まぁ、そうですね」
「はーい。席に着いてー」

私が返事をしたのと同じタイミングで先生が来たので、イケメン王子はニッコリ笑って「じゃぁ、お願いするね」と言って前を向いた。
うーん。別に言うのは良いんだけど………ゴリ押しされたような気が……。ゴリ押ししてまで頼むような内容だろうか?まぁ、とりあえず言うだけ言ってみよう。などと考えていると、ポケットに入っている携帯がヴーヴーと震え出した。先生にばれないようにこっそり取り出して見てみると丸井さんからメールが届いていた。
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