春うらら

□第二十八話
1ページ/1ページ

ジリリリリ!!

激しい目覚ましの音で、どうにかこうにか目を覚ます。低血圧なので爆音の目覚ましじゃないと起きれないのだ。もぞもぞと起き上がり、眠い目をこすりながらダラダラと制服に着替えていると携帯が鳴った。
こんな朝早くから誰だろう。と思いつつ、携帯を見ると丸井さんからメールが届いていた。

『今日の練習試合見に来いよ!』

……………。色々唐突すぎる。今日の試合とか。学校あるし無理だよ。それにテニスのルールも良く知らないからなあ。てか、そもそも見に行ってどうするんだ。…あ、応援しろってこと?などと思いながら返信する。

『むり』

これで良し。さぁ、朝ごはん食べよう。バタートースト食べたいけどお味噌汁も飲みたいなあ。どうしようかな。と悩んでいるとまた携帯が鳴った。丸井さんから今度は電話がかかってきたようだ。

「はい、もしm「おい!無理ってどういうことだよ」
「え」
「え、じゃねぇよ」
「いや、だって学校だよ?」
「は?………今日休みだぞ」
「アレ?」

慌ててカレンダーに目をやる。
昨日は17日だったから今日は18日で……あ………今日……土曜日だ……。
青色で「18」と書かれたカレンダーを呆然と見つめつつ声を出す。

「今日土曜日だね……」
「………お前大丈夫か?」
「あんま大丈夫じゃないかも…」
「…ドンマイ」
「あーもー、せっかく制服に着替えたのに…」
「お!ちょうど良いじゃん。そのまま学校来いよ」
「えー」

などと丸井さんとやりとりをしていると電話口の向こうで何やら騒ぎ始めた。かすかに「うわ、なんだよ仁王」「替わりんしゃい」「はぁ?」「ブンちゃんばっかりズルいナリ」とか聞こえてくる。そして、しばらくガチャガチャと何かが擦れる音がしたあと「もしもし」と仁王さんの声が聞こえた。どうやら仁王さんと替わったらしい。

「仁王さん?」
「ん。おはようさん」
「うん。おはよう」
「なぁ、名無しちゃん」
「んー?」
「今日の試合見に来て」
「えー」

丸井さんといい仁王さんといい、何なんだ。見に行ったからって何になるんだ。ルールもわからないのに見ても面白くないじゃないか。

「私テニスのルールとかわからないんだけど」
「大丈夫じゃ。今日の対戦相手は見てるだけでも面白いからルール知らんでも退屈せん」
「えー」
「それにブンちゃんの妙技も俺のイリュージョンも見れるぜよ」
「……(イリュージョン?)……」
「イリュージョン見たくない?」
「……………イリュージョンって何するの?」
「それは見てからのお楽しみじゃ」
「……………」

…仁王さんめ……教えてくれても良いじゃないか……。ていうか、イリュージョンって手品する人の台詞だよね。………試合中に手品でもするんだろうか。ちょっと気になる。
少し、見に行ってみても良いかも。と思っているとまた電話口の向こうが騒がしくなった(「仁王ケータイ返せよ」「いやじゃ」「俺のケータイだろぃ!返せって!」)。そして、またガチャガチャと音がしたあと「あ、もしもし名無しの?」と声が聞こえた。

「うん」
「とりあえずお前今日試合見に来いって」
「えぇ………うーん………」
「んで、試合終わったらラーメン食いに行こうぜ」
「え」
「なんか前に行ったラーメン屋の割引券貰ったんだよ」
「うわ、何ソレ素敵!行く!」
「よし!んじゃ、またな!」
「はーい」

丸井さんの素敵な提案に乗っかることにした。だってラーメンの割引券とか素敵すぎる。電話の切り際に仁王さんの「ラーメンが目的なんか…」とかなんとか言う声が聞こえたけど気にしない。あ、何時から試合あるのか聞くの忘れた……。まぁ、いいか。適当に行けばなんとかなるよね。
よし、まずは朝ごはん食べよう。組み合わせ変だけど、バタートーストとお味噌汁食べようかな。ホットケーキも食べたいかも。などと悩みながら、携帯をベッドに放って部屋を出た。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ