春うらら

□第二十九話
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今日テニス部の練習試合があるらしい。丸井さんと仁王さんに誘われたので見に来たのだが、テニスコートの周りが凄いことになっていたので、思わず足が止まってしまった。立海の制服を着た女の子と他校の制服を着た女の子がテニスコートの周りに群がってキャッキャッとはしゃいでいるのだ。
「頑張ってー!」「キャー!幸村くーん!」と声をかけたり「跡部くん来てるよね!」「忍足くんにアドレス渡そうかなあ」と女の子同士でお喋りしたり。
うわぁ……すごい。アイドルのコンサートみたいだな。他校の子たちもいるってことは対戦相手の人も人気があるんだなあ。やっぱりイケメンなんだろうか…。近くで見てみたいがこの人混みを割って入る勇気なんてないし……どうしよう。などと考えていると、女の子の群れの中から「名無しちゃーん!」と声をかけられた。
誰だ?どこから呼んでるの?とキョロキョロしていると、ハナちゃんが手を振っているのが見えた。あー、ハナちゃんも見に来てるんだと思いつつ、手を振り返す。すると、ハナちゃんが人混みの中から出てきた。

「名無しちゃん!」
「あー、ハナちゃん。来てたんだね」
「部活だったんだけど一時中断してバレー部全員で見に来たんだー。前の方で陣取ってるから名無しちゃんも一緒に見ようよ」
「え、いいの?」
「うん!行こ行こ」

「じゃぁ、お願いします」とハナちゃんの言葉に甘えて、バレー部のところにお邪魔させてもらうことにする。ハナちゃんに手を引かれながら人混みを進み、前の方へ。

「おー、コートの真ん前!」
「へへへ、ベストポジションでしょ?」
「うん。良いね。よく見えるし」
「てか名無しちゃんがテニス部の試合見に来るなんて意外だったからビックリしたよ」
「アハハ。それならバレー部の方がビックリだよ。部活中断するとか」
「……部長が柳くんのファンでさー…どうしても見たいって言うからさー…」
「あぁ…、お疲れハナちゃん」

なんてお喋りしているとコートに人が並び始めた。
幸村さんを先頭にテニス部の人たちがずらり。相手側も目元にホクロがあるイケメンを先頭にずらり。
………うーん、どっちもビックリするぐらいイケメン揃いだな。イケメンじゃないとテニス部に入れませんとか言われそうなほどイケメン揃い。偶然でこんなにイケメンばかり揃うもんだろうか。実はどっかから集めてきてるんじゃないの。とか考えていたら、試合が始まった。

「きゃー!忍足くーん!」
「向日くん頑張ってー!」
「丸井くーん!ジャッカルくーん!頑張ってー!」

試合が始まった途端、大歓声。
いやぁ……みんな元気だね。そんなに大声出して大丈夫なんだろうかと心配しつつ試合を見る。
……あの対戦相手の二人なかなか個性的だな。一人はやたらピョンピョン飛び跳ねて「もっと飛んでミソ」とか言ってるし、もう一人は丸眼鏡をかけている。丸眼鏡とか今時の子がチョイスするものかなあ。もうちょっとオシャレな眼鏡があるだろう。あの人の中では丸眼鏡がオシャレなんだろうか……。あ、ミソの人が飛んだ。うわ、すっごい飛ぶな。あの人テニスじゃなくて高跳びとかの方が向いてるんじゃないかな。どうしても球技が良いならバスケとかバレーとか跳躍力を活かせるやつの方が良くないか?

「ゲームアンドマッチ立海!」
「「「きゃー!」」」

対戦相手の人たちを見てる間にいつの間にか試合が終わってしまった。
………ヤバイ。さっきの試合、丸井さん出てたのにちゃんと見てなかった…。丸井さんとジャッカルさんの活躍ほとんど見てないよ…。そういえば仁王さんが「ブンちゃんの妙技が〜」とか言ってたっけ。
妙技って何。なんか凄いことやってた?…………うわ、本当に何にも覚えてない…。丸眼鏡とミソしか覚えてない…!見てないなんて言ったら丸井さんに怒られる…!

「きゃー!仁王くーん!」
「柳生くん!頑張ってー!」
「宍戸くーん!」
「鳳くーん!頑張ってねー!」

ヤバイヤバイと焦っていると、次の試合が始まった。コートには仁王さんと柳生くん。帽子をかぶった人と背の高い人。
よし、この試合はちゃんと見よう。見てないと仁王さん拗ねそうだし。と考えつつ今度はよそ見をせず観戦することにする。
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