春うらら

□第二十九話
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「ゲームアンドマッチ立海!」
「「「きゃー!」」」

よそ見をせず観戦した結果、人間離れした技の数々と突っ込みどころの多さに度肝を抜かれてしまった。
まず、対戦相手の背の高い人の「一・球・入・魂!」とか言って繰り出されるサーブ。もう、あれなに?速すぎだし、あの掛け声なに?掛け声は言う決まりなの?
あと、柳生くんの「レーザービーム!」とか言って繰り出されるショット。なんなのあれ。ネーミングセンスに愕然としたよ。確かにすっごいスピードだったけどビームはどうかと思う。めっちゃ早くてボールとか一切見えなかったし、ボールってあんなに早く動くんだなと感心してしまうくらい早かったけどもビームはないよ、ビームは。
最後は仁王さんと柳生くんのイリュージョン。実は入れ替わっていたとか……。前に見たときより似てた気がするんだけど。ハナちゃんが「変装しただけであんなに似る?!」ってビックリしてたよ。あ、あと仁王さんの呼び名。「コート上のペテン師」って誰がつけるの?丸井さんにも呼び名あるだろうか。
などと、頭の中で散々疑問と突っ込みをぶちまけているとコートから離れる仁王さんと目があった。じっと見てくるので口パクで「お疲れ」と言うと、嬉しそうに笑い返された。


その後、柳さんとモジャモジャ頭の男の子の試合を見て(どっちも疑問と突っ込みどころ満載の試合だった)、残り一試合になった。真田くんと目元にホクロのあるイケメンが対戦するらしい。
真田くんがコートに入って、続いてホクロの人もコートに入ろうとしたその時。

「「「氷帝!氷帝!氷帝!」」」

どこからともなくコールが聞こえてきた。
え、何事?!とキョロキョロしているとホクロの人が右腕を高々と上げ、パチン!と指を鳴らすとコートが静まりかえった。
…………え。何あの人。指パッチンで変なコール止めたよ……何者なの?と困惑しているとホクロの人が口を開いた。

「俺様の美技に酔いな」
「「「きゃー!跡部さまー!」」」

……………………………………………駄目だ。笑っちゃ駄目だ。ご本人は至って真面目に言っているんだし、アレをカッコイイと思ってる子だっているんだから笑っちゃ駄目だ。ギャグじゃないんだ。彼は本気なんだ。笑いをとるためにやってるんじゃない。我慢しろ自分。
笑いたくて仕方ないが必死に堪える。口を手で押さえてなんとか堪えているが我慢すればするほど面白くなってくる。直視すると笑ってしまうので手のひらで顔全体を隠す。
いや、もう、だって、おかしいよ。何なのあの人。指パッチンはするし決め台詞は言うし………。しかも「俺様の美技に酔いな」って………。美技って自分で言う?普通言わないよね。もんのすごくイケメンだから許される行為だけど、普通の人だったらブーイングものだろう。ていうか、よくみんな笑わないで見てられるな。と思い周りを見ると、ハナちゃんが思いっきり笑いを噛み殺した顔をしていた。
あぁ、良かった。やっぱりアレを面白いと思う人もいるんだ。と安心しているといつの間にか試合が終わっていた。



すべての試合が終わったのでハナちゃんは部活に戻り、私は丸井さんと仁王さんを待つために図書室へ向かう。試合後のミーティングやら着替えやらで時間がかかるらしいので本でも読んで時間を潰すつもりだ。
あー、それにしても今日はなかなか面白かったな。テニスの試合のことは全然わからなかったけど、みんなのキャラが個性的すぎて見てて飽きなかった。特にホクロの人。本当に凄かった。彼の試合はまた是非見てみたい。などと考えながら図書室に入った。
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