春うらら

□第三十二話
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最近、数学に苦戦している。もうすぐ期末テストがあるので勉強しているのだが数学だけ全くと言って良いほど勉強が進んでいない。元々苦手な教科ではあったのだが今回は特に酷い。全く解ける気がしない。どこをどう解いていけば答えを導き出せるのかわかない。
そんな状態の中、この前数学の小テストがあった。抜き打ちテストだったので予習もしておらず、とりあえずわかる問題だけ解いて提出したのだが、その小テストの結果が散々なものだった。

「えー、今返した小テストの結果が芳しくないヤツ。期末テスト、ヤバイことになるからしっかり復習しとけよー」

と、言い残しチャイムをBGMに教室を出ていく先生。先生の発言にザワザワと騒ぐ生徒たち。
「えー、私ヤバイってー」「何点だった?」「俺30点なんだけど大丈夫かな」などという会話を聞き流しながら自分の50点満点中8点の小テストを握りしめる。
………これはヤバい…50点満点中8点はヤバい。みんな30点とかで「大丈夫かな?」と思ってる中、8点は駄目だ。今までで最低の点数なんだけども。赤点取りそうなんだけども。今から全力で数学の勉強しても一体どこまで出来るか……。
他の教科もあるから数学だけ勉強するわけにもいかないし…。いっそのこと数学は捨てて他の教科で頑張るか?……………いや、駄目だ。平均点しかとれない自分がそんな無謀なチャレンジは危ない。最悪の結果になる。でもこのままでも最悪の結果になりそうだし………

「…名無しのさん、大丈夫?」
「…え?あ、はい。大丈夫です」
「そう?さっきからうつ向きながら唸ってから具合悪いのかと思ったんだけど……」

うわ、恥ずかしい…。悩みすぎて唸っていたのに気付かなかった。
心配そうに見つめてくる幸村さんに「すみません、大丈夫です」と言うと「そうかい?無理は良くないよ」と返された。
幸村さん優しいなあ。さすが王子様だね。と思いつつ再度口を開く。

「体調は至って良好です」
「そう。……あ、何か悩みごと?相談にならいつでも乗るよ」

やたらとニコニコ笑顔の幸村さん。
幸村さんとお喋りするようになってから、王子スマイルと悪巧みスマイルの区別がつくようになってきたので、この笑顔は悪巧みスマイルだな、相談乗るよとか言いながら悪巧みスマイル……何企んでるんだろう。と思いながら、数学の小テストの結果が芳しくなかったことを伝える。

「実は小テストの結果が悲惨で……」
「へぇー。何点だったんだい?」
「えっと………………8点です」
「あー………それは…」
「ははは、悲惨ですよね……………あ、幸村さんは何点だったんですか?」
「ちょっとケアレスミスしたんだけど…」

と言いながら小テストを見せてくれたので、拝見させてもらうと48点という高得点だった。

「うわあ、幸村さん頭良いですねぇ!」
「そんなことないよ。わからないところは蓮二に教えてもらったりしてるからね」
「あー、柳さん学年一位ですもんね」
「うん。………あ、そうだ!名無しのさんも蓮二に教えてもらったら?」
「え」
「うん、それが良いよ。蓮二、教え方も上手だからわかりやすいし」
「いやいやいやいやいや、それは柳さんに悪いので……」
「大丈夫大丈夫。俺から蓮二に言っておくから」

幸村さんがにっこり笑いながら恐ろしい提案をしてくる。いや、教えてもらえるのは大変ありがたいのだが柳さんに教えてもらうのはちょっと遠慮したい。柳さんの開眼を見て以来、前より更に苦手になったのに、勉強を教えてもらうだなんて無理。マンツーマンで教えてもらったりなんかしたら緊張で集中できない。
幸村さんに何度も「ほんと大丈夫なんで。柳さんに悪いんで」と言ったのだが聞き入れてもらえず、悪巧みスマイルの幸村さんに「今日の放課後、蓮二が教えてくれるって」と言われてしまい、思わず口元がひきつる。
……連絡取るの速すぎる。いつ携帯出した?見えなかったよ?もしや、幸村さんの勝手な判断じゃないよね…?
「ぶ、部活とかあるんじゃないですか?」とも言ったのだか「テスト前だから休みなんだよ」と返されてしまった。いつもテスト前でも部活してるくせに、なぜ今回は休むんだ。と思いながら幸村さんにバレないようにこっそりとため息をついた。
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