春うらら

□第三十四話
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「はい、一応計っときんしゃい」
「あ、うん」
「まぁ、さっきよりは熱くないから下がっとるとは思うけど」
「……………………ん?さっき…?ていうか仁王さんなんでいるの?」

体温計を脇に挟みながら仁王さんに訪ねると、実は私が来る前から保健室にいた、とのこと。
マジか。あのベッドに横になっていた人は仁王さんだったのか。具合が悪い人じゃなかったのか。と驚いていると「終業式とか面倒じゃから保健室で寝てたら、いつの間にか隣のベッドで名無しちゃんが寝ててビックリしたぜよ。しかも熱があるとか言うし…。心配したナリ」と言われてしまった。

「ご心配をおかけしました…」
「ほんまじゃ。幸村と名無しちゃんのクラスの………大岡?いや、大倉?とかいう女も心配しとったぜよ」
「大岡ね。……そっかあ、ハナちゃんと幸村さんも心配してくれたのか…」
「あ、ほんでホームルームも終わっとるから名無しちゃんの鞄とかこっちに持ってきといたナリ」
「あー!ごめん、ありがとう………て、仁王さんもしかして私の成績表見た?」
「プリ、」

くそぅ、見たのか。鞄の中から通信簿が覗いてるからもしやと思って聞いてみれば……。まぁ、どうせ平均点まみれだから見られても良いんだけどね。と思っていると体温計が鳴った。

「お、37.4。下がってるー」
「良かったのぅ。でもまだ安心はできんぜよ」
「そうだね。平熱に戻るまで気を付けるよ」
「家帰ったら消化に良いもん食べて薬飲んで、もう一回ぐっすり寝んしゃい」
「うん。そうする。……………よし、今のうちに帰ろうかな」
「んじゃ、送っていく」
「え、いいよ。悪いし。一人で大丈夫だよ」
「駄目。ぜったい駄目。ぜったい送る」
「………………………じ、じゃぁ、お願いします……」

こ、こわい…。あの目は怒ってる時の目だ…。なぜ怒るんだ…。一人で帰るって言っただけなのに…。それに、さっきの話からして、私が寝てから今までずっと仁王さん付いててくれてたんだよね?看病してもらってさらに送ってもらうとか本当に申し訳ないんですけど…。うーん、これは今度何かお礼しないといけないな…。なんて考えながらベッドから出て、鞄を持つ。
………………なんか重い…。朝持った時より重い気がする。プリントやら通信簿が入ってるから多少は重くなるだろうけど、これは重すぎやしないか?
なんだか不安になったので鞄の中身を確認すると、ゼリー3つとスポーツドリンク1本が入ったビニール袋が出てきた。

「………なにこれ?」
「さぁ?俺は知らんぜよ。………あ、名無しちゃんメモ入っとる」
「え、どこ?」
「これ」

仁王さんから受け取ったメモを見てみると『熱出てる時は喉ごしが良いもの食べたくなるだろうから、コレでも食べて元気だして』とハナちゃんと幸村さんの連名で書かれてあった。
たぶん仁王さんが鞄を取りに行く前に入れてくれたんだろう。うわー、かなり嬉しい。良い友達もったな自分。ダルい体に優しさが染みるよ。家に帰って味わって食べよう。と一人で感動しつつ、丁寧にビニール袋を鞄にしまう。そして再度鞄を持とうとすると横から仁王さんに奪われてしまった。

「え」
「俺が持つ」
「え、いやいやいや。いいよ、大丈夫。鞄ぐらい」
「駄目」
「いやいや、悪いから。大丈夫だって、持てるよ」
「駄目。病人なんじゃから」
「……………………あ、はい。すみません。お願いします…」

仁王さんの目、ちょーこわい。ていうか鞄も持たせてもらえないとか、どんだけ病人扱いするんだ。大丈夫だよ鞄ぐらい。自分の鞄ぐらい余裕だよ。心配してくれるのは嬉しいけど、心配しすぎじゃなかろうか。と心の中でため息をつきながら、仁王さんと一緒に保健室を出た。
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