春うらら

□第三十七話
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今日は花火大会食い倒れツアーの日。ウキウキしながら集合時間に間に合うように準備をする。
いっぱい食べる予定だからお腹周りが苦しくならない服装にしなければ……。うーん、新しい服着ようかな?この前ハナちゃんと遊んだ時に買ったやつ(この服も当然ハナちゃん選んでもらった)。マキシ丈のワンピに編み目の荒い七分丈のカーディガンにサンダル。うん、これでよし。化粧はかるーくして…………髪の毛も緩く結って上げとけば首周り涼しいよね…。
おnewの服に少しテンションが上がって、いつもはほとんどしない化粧と髪の毛のセットをしてみる。普段し慣れていない分、少し手間取りはしたものの、満足のいく出来映えに仕上がった。よしよしと鏡で最終確認をして時計を見てみると、家を出る予定の時刻を少し過ぎてしまっていた。
げっ!遅刻する!丸井さんより遅れたら絶対文句言われる!それはやだ!
慌てて櫛を放り投げ、鞄に携帯と財布を突っ込み、家を飛び出した。



焼きそば・たこ焼き・お好み焼き・焼きとうもろこし・イカ焼き・フライドポテト・フランクフラルト・クレープ・わたあめ・チョコパナナ・冷やしパイン・かき氷・リンゴ飴などなど、たくさんある屋台に目を奪われるが、今は我慢だ、と自分に言い聞かせて足を前へ動かす。
早足で急ぎながら、携帯で時間の確認をすると待ち合わせの時間を二分ほど過ぎてしまっていた。
あ、ヤバイ……まだ来てませんように。と心の中で祈りながら待ち合わせ場所へ向かうと、見慣れたシルバーヘアーが内輪で扇ぎながらダルそうに立っていた。
うわ、もう来てる!待たせてしまったみたいだ…。申し訳ない。…でも丸井さんがまだ来てないみたいで良かった。
頭の中で丸井さんがまだ着いていないことにホッとしながら、さっきよりスピードをあげて仁王さんに駆け寄る。

「ごめん仁王さん!待った?」
「あ、名無しちゃん。ううん、待っとらんよ」
「ほんと?」
「うん」
「そっか、ごめんね、ありがとう」

へらりと笑ってお礼をいうと仁王さんもへらりと笑い返してくれた。
二人でへらへら笑い合っていると後ろから肩をたたかれた。

「よっ、待った?」
「あ、丸井さん。今来たの?」
「おぅ」
「なら遅刻しなかったの仁王さんだけだね」
「2・3分の遅刻なんて遅刻じゃねーよ。な、仁王」
「ブンちゃんウザイ」
「え、なんで?」

ぎゃぁぎゃぁとじゃれあう二人(「ブンちゃんウザイ。まじウザイ」「はぁ?なんだよ荒れてんなあ。なんかあったのか?」「プリ、」「プリじゃわかんねーよ」「ピヨ」「お前な………」)を眺めていると、私のお腹がぐぅぅぅっと鳴いた。

「…………」
「「ぷっ」」
「………すみません」

恥ずかしい…。笑われてしまった…。食い倒れツアーの為にお昼ご飯を少なくしたのが良くなかったかな。
お腹を撫でながらそんなふうに思っていると丸井さんが「名無しのが腹減ってるみたいだし、そろそろ行くか」と言ってくれたので「うん」と返事をして、三人揃って屋台の方へ歩き出す。
あー、何食べようかな…。色々あって目移りしてしまうけど………とりあえず甘いものより焼きそばとかガッツリ系攻めたいな。……あ!あれ食べたい!
私が1番最初に心を奪われたのはイカの姿焼き。もう匂いが素晴らしい…!醤油の程よく焦げた匂いが食欲をそそる。
隣にいた丸井さんの肩をたたきながら、屋台を指差して口を開く。

「あれ!あのイカの姿焼き!あれ食べたい!」
「お!良いじゃん!俺はその横の焼きとうもろこし買ってくるから、俺の分シクヨロ!」
「りょーかーい!」
「え、ちょ、二人とも急に何なん…?」

突然テンションが高くなった私と丸井さんに戸惑う仁王さんの腕を引きながら屋台に向かい、イカ焼きを2つ購入。

「あれ?仁王さん食べないの?」
「1つ丸々はいらんしのぅ…」
「絶対美味しいから食べた方が良いよ」
「んー、名無しちゃんの一口もらうぜよ」
「え、ちょ、」
「ん、ウマ!」
「も〜……」

まだ一口も食べてないのに仁王さんにかじられてしまい、少しムカついたので軽く仁王さんの肩を殴ると笑いながら「暴力はんたーい」と言われた。
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