春うらら

□第三十九話
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「幸村がそういうn「わ、私がシンデレラ役なんて、絶対駄目だって!…私より小城さんの方が幸村さんと並んだ時に綺麗だし、美男美女の方がお客さんもたくさん集まるよ、絶対!」

入野くんが余計なことを言う前に言葉を遮り、別の女の子を推して、私なんかが幸村さんと並んだらどっちか女の子かわからなくなるよ!とクラスの子たちに全力でアピールする。
幸村さんに直接抗議すれば口で負けてしまう…。クラスメイトを味方につけないと…!

「えっ、私!?」
「うん!小城さん美人だし、美人がヒロインだったら男性客はバッチリゲットだし、幸村さんが王子役してくれたら女性客もバッチリだし…。二人揃えば文化祭のうちのクラスの収益率ハンパじゃないと思う!」
「あー…それは確かにそうかもなー…」
「収益率のこと考えたら…」

ザワザワとクラスメイトたちが私の意見に賛同の声をあげてくれている。
……よ、良かった。これでどうにかなりそうだ…。とホッと息を吐いていると、肩を上下に揺らしている幸村さんが目に入った。
…これ笑ってるよね…。私の慌てっぷりを見て笑ってるよね…。誰のせいで慌てる羽目になったと思ってるんだ…!
隣からかすかに聞こえる笑い声にイラッとしながら、小声で「何笑ってるんですか」と幸村さんに声をかけると、クスクス笑いながら「いやー、必死に拒否する姿が面白くてさ」と返されて更にイラッとした。



その後、シンデレラ役の推薦を受けた5名(なぜか私も入っていた)で、ジャンケンをしてシンデレラ役を決めることになった。5人一斉にジャンケンして3回負けた人がシンデレラ役になるというルールだったのだが、激闘の末、2勝1敗でどうにかこうにかシンデレラ役は免れた。
一度ジャンケンに負けて、絶望的な表情をした私を、指差してケラケラ笑っていた幸村さんの悪魔のような笑顔は絶対忘れないと思う。

シンデレラ役に決まった小城さんに「なんで幸村さんを王子様に推薦したのに、シンデレラやりたくなかったの?」と興味本意で聞いたところ「演技する幸村くんを客席で心置きなく見たかったの……あぁ…最悪…」と落ち込んでいたが、幸村くんが「小城さん、一緒に頑張ろうね」と微笑みかけると「うん!頑張る!」と元気よく返事していた。
小城さんって意外に面白い子なんだな。と思っているうちに、他の配役もスラスラと決まり、私は衣装係に抜擢された。幸村さんに嫌がらせで「王子の衣装は名無しのさんが作ってくれるんだよね?」と言われたからだ。
王子様の衣装とか、とてつもなく面倒くさいのに…。あまりの面倒臭さに口元がひきつりながら「は、はい。わかりました…」と答えると、とびっきりの笑顔で「よろしくね」と微笑まれた。
幸村さんの笑顔にキャーキャー騒ぐ女の子の声を聞き流しながら「…なんでそんなに嫌がらせばかりするんですか?」と聞いたら「俺が(嫌々)王子役やってやろうとしてるのに、隣の席でヘラヘラしてたからかな」とイケメンスマイルで返された。
…えええぇ?普通に座ってただけなんですけど。それをヘラヘラって…。ていうか、私何も悪くなくない?とばっちりじゃない?と思ったものの、幸村さんに反論する勇気はなくハハハと乾いた笑いを浮かべ、こっそりため息をついた。
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