庭球のお話

□言い寄られる話2
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家のドアを開けると、そこにはニコニコと笑うストーカーがいました。

「おはよう、名無しのさん」
「…お、…おは……え、いや、え?なん、なんで…ここに…」
「一緒に学校行こうと思って迎えに来たねん」
「…な、な…なん」
「アハハ、どないしたん?めっちゃどもってるで」
「…いや……なんで家の場所しっ」
「ちょっと何やってるの名無し!早く学校行かないと遅れ……あら。お友だち?」
「え、ちが」
「朝早くにすみません。僕、名無しさんと同じ大学の白石蔵ノ介いいます」
「まぁ!ご丁寧にどうも。…もしかして名無しの彼氏?」
「そうなれたらえぇなぁって思てます」
「やったわね名無し!イケメンの彼氏出来たじゃない!」
「お母さんやめて。ほんとやめて」
「もうこの子ったら照れちゃって!」
「ほんと違うから。マジで違うから」
「はいはいわかったわよ、面白くない子ねぇ。さ、早く学校行かないと遅れるわよ。じゃぁね、白石くん。また来てね」
「ありがとうございます。お騒がせしてすみませんでした。…名無しのさん行こか」
「………」
「いってらっしゃーい!」

行ってきます、と私の母に手を振るイケメンを見ながら深くため息を吐く。
どうしてここにいるんだろう。いつの間に家がバレたんだ?それに、迎えに来たって何?ほんとやめてもらいたい。お母さんもお母さんだよ、なんでストーカーと仲良くしてんの。「なぁ、名無しのさん」おっと、雑音が聞こえるけど無視だ無視。まぁ、お母さんはコレがストーカーってこと知らないから仕方ないんだろうけど。コレは外面は良いからお母さんが気に入るのもわからなくはないけどストーカーなんだよ。「名無しのさん、聞こえてる?」無視してるんだよ。わかれよ。ほんと危ないヤツなんだから仲良くしないで。ていうか、マジなんなのこのストーカー。なんでいるの。本当にもう勘弁してほしい「名無しのさーん」あー、うるさい。話しかけるな。私はあんたと話すことなんてない。あーあ、学校どころか家まで来るってほんと無理なんだけど。もうやだ。すごいやだ。とうとう私の安息の地までバレてしまうなんて。ほんとに「名無しのさん」…しつこい。黙って。シャラップ。私の思考の邪魔までしないで。ていうか、なに?彼氏になれたら良いなってやつ。マジでゾワッてしたからね。鳥肌マックスだった。ほんと勘弁して。あー、今日も盗撮されたりするんだろうか…。あぁ、私の平穏な日々はいったいいつ帰ってくるん「名無しのさんさっきからヒドイなぁ。全部声に出てるで」

「うるさいな。わざとだよ」
「厳しいなあ」

げんなりしている私の横で、イケメンスマイルを浮かべる白石くん。私の悪口のオンパレードを気にすることもなくニコニコしている。

「名無しのさんはお母さん似なんやな」
「ストーカーは黙って下さい」
「ストーカーちゃうのに」
「ストーカーだよ。盗撮したり、帰り道に待ち伏せしたり、突然家にまで来たり、ストーカー以外の何者でもないじゃん」
「名無しのさんを悪いヤツから守ったらなアカンやろ?」
「脈絡ないな。それに悪いヤツはあんただよ。どっかいけよ」
「俺がしっかり守ったるから安心してな」
「人の話聞いて下さい」

ダメだ、このストーカー。何言っても無駄かもしれん。深く深くため息をつきながら、不本意だがストーカーと共に大学へ向かった。
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