庭球のお話

□平穏な日常の話
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朝。コーヒーの匂いとパンの焼ける香ばしい匂いで目が覚める。
いい匂い…もう雅治は起きてるのかな…。私もそろそろ起きないと…。

「おはよ名無しちゃん、そろそろ起きんしゃい。朝ごはん出来たぜよ」
「……う〜ん………おはよ…」

ベッドで微睡んでいたら雅治が起こしに来てくれたので、手をひいて起こしてもらって、そのまま食卓へ向かう。

「今日の朝ごはんは?」
「ホットサンドとコーンスープ。コーヒーは?」
「お願いしまーす」
「はーい」

食卓について、すでに並べられている朝ごはんに頬が緩む。
今日も美味しそう…。雅治と結婚してから朝ごはんを欠かしたことがない。どんなに朝早くても雅治がきちんと用意して、一緒に食べるようにしてくれているから。

「はい、コーヒー」
「ありがとう。……いただきます」
「いただきます」

二人で挨拶をして、ホットサンドを一口かじる。程よく溶けたチーズとハムと卵が上手く絡んでいてとても美味しい。

「うん、美味しい。ほんと料理上手くなったよね。練習の成果だねぇ」
「名無しちゃんに不味いもん食わせるわけにはいかんからのぅ」

クスクスと二人で笑い合って、ご飯を食べ進める。
雅治に「今日は何時ごろ帰って来れる?」と聞かれたので「遅くなると思う。10時過ぎるかも」と答えた。

「わかった。晩ごはんのリクエストある?」
「うーん……鶏肉が食べたいかな」
「鶏肉か…チキン南蛮とか?」
「あ、良いね。タルタルソースたっぷり希望」

なんて話をしているうちに完食。ごちそうさま、と手を合わせてから、食器を洗うために立ち上がると「俺が洗うから、早く準備しんしゃい」と言ってくれたので好意に甘えて食器を任せる。
寝室に戻ってパジャマからスーツに着替えて、化粧をしていると片付けを終えた雅治が寝室に入ってきた。

「口紅もうぬった?」
「まだだよー」
「じゃぁ一回だけ…」
「ん…」

ちゅ、と音をたててキスをする。一回だけと言ったくせに何度も啄んでくるので、雅治のトレードマークの尻尾を引っ張って、顔を話す。

「いった…、ヒドいナリ」
「一回だけって言ったでしょ」
「ピヨ…」

ムスッとしている雅治の頭を軽く撫でて、口紅をつける。よし、出勤の準備完了。
玄関にある鏡で最後の身だしなみチェックをして、雅治に頬にキスしてもらって玄関のドアを開ける。

「行ってきます」
「いってらっしゃーい」

ヒラヒラと手を振る旦那様に見送られて会社に向かう。
朝の挨拶も朝ごはんもいってらっしゃいの挨拶も愛妻(愛夫?)弁当も、全部雅治と結婚してから手に入れた毎朝の光景なのだが、それが今や私の宝物になっている。これからもこの宝物を壊さないようにしないといけないなぁ。よぉし、雅治のために今日も仕事頑張るぞー!
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