庭球のお話

□平穏な日常の話
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夕方。愛しの奥さんのリクエストに応えるために、タルタルソースを作っていると携帯が鳴った。名無しちゃん専用の着メロをだったので、慌てて電話に出る。

「もしもし」
『あ、雅治?いま大丈夫?』
「うん。どうしたん?」
『へっへっへー。実はもう仕事終わったんだー』
「おっ、良かったのぅ。そんじゃ早く帰ってきて」
『うん、すぐ帰るよ。あ、あとね帰りに駅前のケーキ屋さんに寄るつもりなんだけど何か食べたいものある?』
「うーん……チーズケーキが食べたいナリ」
『オッケー。買って帰るー』
「ありがと。帰り道気ぃつけての」
『はーい』

もう仕事が終わったみたいじゃ。今から名無しちゃんが帰ってくると思うと、ついニヤけてしまう。
おかえりってギュッてしてから、一緒に晩ごはん食べて、ゆっくりお風呂にでも入ってもらおう。日頃の疲れをこんな時にこそ癒してもらわんとな。さて、名無しちゃんが家に到着するまでに、晩ごはんとお風呂の準備をしておこうかの、と気合いを入れて再び料理に取り掛かった。





「たっだいまー」
「おかえり!…ご飯にする?お風呂にする?それとm「お腹ペコペコだから、ご飯!」
「ピヨ…」

定番のあの台詞を言おうとしたのにアッサリ遮られてしまった。少しつまならい気もするが、仕方ない。名無しちゃんの胃袋を満たす方が大事じゃし。
お土産のケーキを受け取ってから、おかえりなさいの意味を込めてギュッと抱き締める。

「化粧落としてきんしゃい。その間に晩ごはんの準備するナリ」
「ありがと」

俺の頬にキスをして洗面所に向かう名無しちゃんにムラッとするがグッと我慢して、自分もキッチンに向かい晩ごはんの仕上げにとりかかる。
我ながらタルタルソースもチキンもスープも美味く出来た。今日もいつもみたいに笑顔で「美味しい」って言ってくれるとえぇな。






夜。俺の腕枕でぐっすり眠る名無しちゃんの頭を撫でる。晩ごはん食べて、お風呂に入って、二人でDVDを観て、夫婦の営みをして、二人でベットに横になると名無しちゃんはあっという間に眠りについてしまった。
実際の年齢よりいくつか幼く見える寝顔をゆっくり眺めるこの時間が、名無しちゃんと結婚して手に入れた俺の宝物。
元は同じ会社の上司と部下で、新入社員で入った俺を指導してくれたのが名無しちゃんだった。それがきっかけで付き合うようになり、三年ほど付き合って結婚。キャリアウーマンでバリバリ仕事を頑張っていた名無しちゃんが「仕事はやめたくない」と言ったので、俺が仕事を辞めて主夫になった。仕事は楽しかったが、それよりも彼女を支えるために家庭を守ることの方が大切だと思った。最初は不慣れだった家事も今やスムーズにこなせるようになり、最近は料理に凝るようにもなってきた。名無しちゃんが笑顔で「美味しい」と言ってくれるのが嬉しくて、ついつい手の込んだものを作ってしまう。
明日は晴れるって天気予報言うとったし、布団でも干そう。朝ごはんは出し巻き卵と焼き鮭にして…。晩ごはんは何が良いかのぅ…。
色々考え事をしていうちに、眠くなってきた。愛しの奥さんの額におやすみのキスをして目を瞑る。
いつまでもこの平凡な幸せが続きますように、と祈りながら眠りについた。


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